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マイノリティとイノベーションのジレンマ投稿日 | 2022.8.15

 

イノベーションのジレンマという言葉があります。

Wikipediaのページを紹介すると、

「大企業にとって、新興の事業や技術は、小さく魅力なく映るだけでなく、カニバリズムによって既存の事業を破壊する可能性がある。

また、既存の商品が優れた特色を持つがゆえに、その特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない。

そのため、大企業は、新興市場への参入が遅れる傾向にある。

その結果、既存の商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に、大きく後れを取ってしまうのである。」ということです。

 

もっと簡単に言うと、ある商品とかサービスで成功を収めたりとかビジネスモデルが出来上がっている会社では、その商品とかサービスとかビジネスモデルを否定するような新しい商品・サービス・ビジネスモデル(イノベーション)を生み出しにくいということです。

 

では企業の中でイノベーション起こす人材というのはどんな人なのでしょうか。

そこにフォーカスしてみると、主流派・多数派に属している人=マジョリティよりもマイノリティ・少数派に属している人の方が、画期的なアイディアやイノベーションというものを生み出しやすいというように言われています。(ご興味のある方は、2022.4.4 日経ビジネス【「よそ者」のイノベーションは宝】をご一読ください。 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00150/032500026/ )

マイノリティはマジョリティが持っている先入観とか固定観念というものに囚われにくいということがその理由です。

先入観・固定観念をそもそも持っていないし、組織の中でその固定観念を強化されないというところで、マイノリティの人の方が、創造的な能力を発揮しやすいというのがあると言われています。

 

ここで、主流派や多数派というものが、日本の労働社会においてどういう人なのかということを考えたいと思います。

まず、日本人、かつ男性で正社員、30代後半から50代半ばぐらいまでの人、これが日本の労働社会におけるマジョリティではないでしょうか。

そう考えると、それ以外の人(という大括りではありますが)がマイノリティと考えていいのかなと思います。

 

イノベーションというと、大層大げさな話に聞こえちゃうかもしれませんが、もうちょっと簡単に考えると、新たなアイディアの閃きであったりとか、気づきであったりとか、違和感を感じるとか、その程度のもののことも含まれます。

その閃き・気づき・違和感を得るために、“多数派”に所属していること自体、その企業にいる長さ・経験の長さというものが、弊害になっているということを、マジョリティの人達は意識しておくべきです。

 

マジョリティの人達の中には勉強熱心な人もいて、「そもそも自分にはイノベーションは生み出せない。そもそもアイディアとか出ないのもしょうがない。だってマジョリティだから。」と考える人います。

しかし、それは傍から見ると開き直ってるようにしか見えません。

世の中のビジネス書や記事では、(マジョリティにはイノベーションは起こしにくいとわかっていながら)マジョリティにいる人がアイデアや新たな気づき・違和感を出してもらわないといけないというような理論が多いように感じます。

それはなぜかというと、マジョリティはたくさんいるから、という理由ではありません。

マジョリティにいる人の方が、仮に新たな閃きや気づきを生み出した時に、実現可能性が高いからです。恵まれた環境にいるからというところです。

 

これは、マイノリティの立場で考えてみるとわかりやすいです。

イノベーティブな発想や新たな閃きや課題発見をし、クリエイティブな解決策を導き出せたとしても、そのマイノリティの人達が、既存の多数派・主流派が占めるシステム・組織・体制の中で、その革新的なアイデアを実現することは結構並大抵のことではありません。

マイノリティの人たちが主流派の人たちの支持を得るということは、とても高ストレスがかかるし、ものすごいハードルが高いわけです(だから起業する人も多いように感じます)。

 

某老舗企業(もうすぐ創業 60年)では、役員が「女性は20代後半になったら結婚して辞めていくから、教育とかね、そんなことあんまり考える必要がない。責任のある仕事は任せられない。」ということを従業員の前で平気で言います。

その会社において、女性従業員の方達はまぎれもないマイノリティであるわけですが、仮にその女性従業員の人達から革新的なアイデアが生まれても、その会社で実現できるとはとても思えないですよね。

ということで、マイノリティの人達にクリエイティブな発想力があったとしても、実現するには障害が大きすぎるっていうことを考えると、多数派にいる人達、主流派にいる人達にアイデアとか気づきとか閃きとか、そういったものを発想してもらうことも、実現可能性を考えると同じくらい重要なことなんだと考えられるわけです。

 

イノベーションに近い発想力を持ちやすいのはマイノリティ、実現にあたって障害が少なそうなのはマジョリティ。

組織の中に意図的にマイノリティを加え、その人達が自由闊達に意見が言える、「出る杭をもっと伸ばす」ような企業風土も大切ですし、

マジョリティもマジョリティであるということを認識し、恵まれた環境にいる“責任”があるということを大切にしていく必要があると考えます。

 

中小企業診断士 森 竜也(筆者のプロフィールはコチラ)

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