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押印廃止投稿日 | 2021.5.11

①「パラダイムシフトに翻弄される印鑑」

 

新型コロナウイルス感染症が蔓延しそれまで聞き慣れなかった「在宅勤務」や「テレワーク」というワードが就労形態の主流になって久しくなりました。相反して、出勤しなければできない仕事(業務)がクローズアップされ、「印鑑」もその煽りをくった形になったといっていいでしょう。私たちのそれまでの価値観がパラダイムシフトし、その影響は勤務形態や印鑑にとどまらず、様々な物事に影響を及ぼしています。その中には電子署名も存在しますが、それはまた違う機会に譲ります。思い切って新形態へシフトしてみると意外に可能と気づく場面も多いことに驚かされます。まるで、このイレギュラーな状況が印鑑不要を推進したかのようです。

 

 

②押印は義務?

 

印鑑(押印)が必要な場面を振り返ってみると、ビジネスシーンは勿論のこと日常生活シーンでも多用されています。ビジネスシーンでは、稟議書や納品書、請求書等といった帳票の類があります。例に挙げた稟議書等の帳票類への押印は義務とされているものではありませんが、慣習として多くの企業が押印を必要としています。日常生活シーンでも、不動産や自動車の購入時、銀行や郵便局等、新型コロナウイルス蔓延下とはいえ実務的にはまだまだ印鑑を必要とするシーンが少なくありません。何故両シーン共に印鑑を必要とするのかといえば、印鑑は本人確認や意思確認という極めて重要な役割を果たしているからです。特に意思確認という場面において、その重要度は頂点に達します。

契約(法律行為)は、当事者の意思の合致により成立し、これを諾成契約といいます。つまり書面の有無に関係なく契約は成立するということです。私たちが、衣料品を路面店で購入する際、わざわざ契約書は作成しませんよね。しかし、特に高額な売買を行う際は話が異なり書面化する傾向が顕著であり、そこへ印鑑は登場するのです。これにより、売買の両当事者の、取引の安全を図ることができます。安心の根拠は、本人確認と意志の合致というころでしょう。そのように考えると、社内、私人間での押印廃止は、まだまだ先のようにも思えたりします。

 

 

③行政手続きの押印廃止

 

一方、私人間の取引と異なり、行政手続きから印鑑を廃止する動きは活発です。受理する行政機関側は、取引の安全とはかけ離れた立場とも言えますから、私たちにとってはウェルカムです。愛知県でも、県民、事業者、市町村からの申請、届出等の手続について押印規定の改正等に取組んだ結果、2020年12月に押印廃止手続数が確定しました。県が押印を求める手続きで押印廃止が決定した数は4,760件、国の法令により押印が求められる手続きで押印廃止が決定した数は1,381件の合計6,141件の手続で押印は廃止となりました。社内でも私人間でも今後推進する動きは活発になるでしょうが、ハンドリングを取り違えないようにしなければなりません。その際、押印に代えて「署名」を求められると、廃止した意味がなくなりますので、注意が必要です。

 

行政書士 入山太郎(筆者のプロフィールはコチラ)

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