


最近AIがコンサルの仕事を奪っていくなどの話をよく聞きますし、否定はしません。
経営コンサルタントとしての成果は、一般的に「売上〇%アップ」や「コスト〇%削減」といった数値で測られることが多く、数字主義の側面があります。
しかし、本当にそれだけが私たちの仕事のゴールなのでしょうか。
先日、ある経営指導を終えた経営者から、思いがけない形で一通の「お礼の手紙」をいただいた。直接手渡されたものではなく、日頃からその企業を支えている地域の支援機関の方を介して、私の元へと届けられました。
その時、支援担当者の方から「先生、〇〇社長からお預かりしていますよ」と手渡され、私は緊張感MAXでこっそりと文字を目で追いながら、しだいに胸が熱くなるのを感じ、安堵と同時に私たちが向き合うべき「支援の本質」について、改めて深い気づきを与えられました。
経営者の相談内容は多発する社員間のトラブル。
社員間の軋轢は職場の空気を重くし、業務の効率だけでなく、組織の結束力をも蝕んでいきます。
「社員とどう意思疎通を図ればいいのか」解決の手法が見つからず、トップとしての孤独と焦燥感が、相談者から滲み出ていました。
経営者という存在は、常に孤独である。
どれほど社員を大切に思っていても、立場が違うがゆえに言えない弱音があり、見せられない不安がある。
「社長、最近元気ないな」と社員に心配されるわけにもいきません。
組織の綻びを目の前にして、一人で責任を背負い込む姿は、決して他人事とは思えませんでした。
コンサルとしての役割
まずは経営者の「心の安全基地(あるいは、合法的な愚痴置き場)」になることから始めました。
客観的な第三者として悩みを受け止め、絡み合った糸をほぐすように対話を重ねます。
その会話から、経営者が何より社員の幸せを願っていることを確信したので力強い言葉で「会社を守る労務制度整備」、「社員との対話を重視した就業規則作り」、「現場の困りごとをトップが直接吸い上げられるしくみつくり」などを提案しました。
経営者の取組み
しかし本当に価値があったのは、その後の経営者自身の行動でした。
経営者は私の言葉どおりに迅速かつ勇気をもって課題解決に取り組み、社員との対話を恐れず、互いの歩み寄りを模索した結果、最終的に「納得のいく合意」を形成することができたのです。
そして成果報告
届いた直筆の手紙には仕組みがうまく完成したことへの安堵とともに、何より「多くの社員と心が通じ合えた」という経営者としての純粋な喜びが綴られていました。
かつてトラブルに悩んでいた職場に、少しずつ対話の文化が根づき始めているという報告は、どんな売上目標の達成よりも私の心を揺さぶります。
さらに嬉しかったのは、この一連の成果と感謝の思いが、仲介してくださった地域の支援担当者の方と共有できたことです。
「先生に入っていただいてよかった」と、まるで自分の手柄のように喜んでくださった。
経営者を陰で支えるパートナーと、私たち外部の専門家がそれぞれの役割を果たし、一社の企業を泥臭く支え抜く。
その連鎖が実を結び、コンサルタントとしての仕事ぶりが「信頼の輪」として外へ広がっていくのを実感できたことは、プロとしてこの上ない栄誉であり、大きな励みです。
コンサルティングの本質とは何か
この経験は、私に経営コンサルタントの「真の役割」を問い直させてくれました。
数字を動かし、組織を変えるのは、あくまで経営者自身であり、そこに働く現場の社員の方々です。
私たちの本質的な役割とは、経営者が孤独な決断を乗り越え、自ら一歩を踏み出すための「伴走者(触媒)」になることです。
支援の手を離れた後も、会社は続いていきます。私たちが去った後に、経営者が「これなら自分たちでやっていける」と自信を持ち、社内に笑顔が増えること。
それこそが、目に見える数字の向こう側にある、本当に目指すべき成果なのだと思います。
今もそのお礼の手紙は、私の机の引き出しに大切にしまってあります。
これから先も経営者の心を動かし勇気を与えるのは「AIではなく人間であるはず」と確信できたエピソードでした。