経営者が事業承継後に取り組むこと
中小企業白書2021年版によると、現経営者が事業承継後5年程度の間に意識的に実施した取り組みとして多かったことは、
新たな販路開拓 44.9%
経営理念の再構築 33.5%
経営を補佐する人材の育成 32.7%
となっています。(複数回答あり)
現在の事業が将来も同様に続く保証はありません。
既存領域での事業展開や既存得意先との取引のみに止まらず、新たに販路を開拓することについて、半数近くの企業が意識的に取り組んでいます。
そして、「経営理念の再構築」には3割以上の企業が取り組んでいます。
経営理念とは、創業者や歴代の経営者がわが社の存在意義としたものです。その価値観が社員に浸透することで、社員の行動規範となります。
事業承継においても、経営理念は引き継がれるものです。現経営者が持つ使命感が経営理念を介して後継者の使命感へとつながります。
経営理念の再構築
経営理念に基づいた経営をおこなうことは、その企業の積み重ねてきたこと、お客様や世間から長年の信用や信頼を得ていることを活かすことにつながります。
経営理念を再構築するということは、経営理念からわが社の原点に一度立ち返り、そのうえで今後のトレンドを見据えて、わが社が何のために存在するのかを考える機会となります。そして、必要であれば経営理念を再構築し、わが社の進む道を決めます。
経営理念の再構築ということは、わが社の事業を再定義することにつながるともいえます。
経営理念が明文化されていない場合もあります。
その場合でも経営理念を再構築できた事例をご紹介します。
経営理念が明文化されていなかったA社では、事業承継するときに、創業者であった経営者がなぜ会社を立ち上げたのか、どのような想いで経営してきたのか、何を守り続けてほしいのかを後継者に話しました。そして、その話を受けた後継者が、経営者や支援者と議論するなかで考えをまとめて経営理念として明文化されました。
その内容は、現経営者の想いを引き継ぐとともに今後を見据えたものでした。経営理念の明文化が経営理念の再構築となったケースです。
ホールディング経営における経営理念の再構築
複数の事業会社がグループとなるホールディング経営において、持株会社(ホールディングス)のもとに全事業会社がグループ企業の一員として前に進んでいくためには、共感できる価値観が必要です。
それが、グループの経営理念です。
グループの経営理念が明文化され、社員の行動規範とすることができれば、異なる事業を経営している会社同士でも一体感が生まれ、お互いに協力し合うことにつながります。
ホールディング経営のデメリットの一つとして、事業会社がそれぞれの意思決定をおこなうことで、バラバラとなって一体感が生まれにくいことが挙げられます。
グループの経営理念を浸透させることによって、それを克服することが可能となります。