経営ビジョンを共有する
経営ビジョンとは、企業が将来なりたい姿、到達したい地点のことです。夢やロマンがある経営ビジョンは、みんなをワクワクさせます。
将来なりたい姿や到達したい地点が明確になることで、現在の姿や地点と比べることができます。
その2つにギャップ(差)がある場合、そこに「出来ていない」という問題意識が生まれます。
現在の姿や地点しか見ていないと「何とかなっているから今のままでいい」という意識に止まってしまいます。
経営者だけでなく、社員の皆様が経営ビジョンを共有することができれば、問題意識も共有することにつながります。
ホールディング経営における経営ビジョンの役割
持株会社(ホールディングス)を活用したホールディング経営における経営ビジョンは、どのような役割を担うでしょうか。
ホールディングスグループの経営ビジョンは、グループ全体の求心力を生みます。
グループの各事業会社は、それぞれ異なる事業を経営しています。
同じ事業の場合もありますが、その場合でも地域が異なるなど、すみ分けされて各々独立して経営しています。
そのような独立した存在ですが、グループ内で相乗効果を発揮する関係があることが望まれます。
その相乗効果の発揮において、「同志」で有るのと無いのとでは生み出すものに大きな差が生まれます。
「志」がグループの経営理念であり、その経営理念を具体化したものがグループの経営ビジョンなのです。
B社の事例から考える
B社は、一般消費者向けに複数の事業を展開している企業です。
現時点では持株会社にはしておらず、組織は事業部制組織の形態としています。
現在のB社社長は、社長就任する前年に中期経営計画を策定しました。
創業者が明文化した経営理念に基づき、社長就任後の5年間で目指す姿を描き、経営ビジョンとして明文化しました。
また、経営にあたっての基本方針も定めました。
そして、補佐役となる経営幹部とともに中期経営計画を策定しました。
社長交代の式典において、新経営者として中期経営計画を全社員に対して発表しました。
その内容は、社員の皆様が自分事として捉えてもらえるように意識したものでした。
社長となって2年目には新しい事業を立ち上げるなど、中期経営計画に基づき順調に事業を推進しています。
今後B社は、第2次中期経営計画においてホールディングス化を具体化する方針です。
将来は、社員を事業会社の経営者に抜擢する意向で、中核人材の育成にすでに取り組んでいます。
B社は、経営理念と経営ビジョンがしっかりと定まっているので、事業の多角化もぶれることなく推進することができています。
そして、社員の皆様も経営ビジョンの実現に向けてベクトルを合わせることができています。
将来ホールディングス化して、一つの会社が複数の会社に分かれることになっても、ベクトルを合わせ続けることが可能だと考えます。