持株会社の役割として事業会社の経営支援があります。主な役割として、
①グループ企業全体への経営資源の配分
②事業会社に不足している機能の補完
③シェアードサービスによるサポート
を挙げることができます。
①グループ企業全体への経営資源の配分
持株会社は、グループ全体の経営戦略を策定してグループ全体の舵取りをします。
そして、そのグループ全体の経営戦略に基づき、経営資源を事業会社へ適切に配分することが求められます。
企業が成長していくために、人材や設備への投資、必要な資金の調達と運用が必要であり、それが「ヒト」「モノ」「カネ」といった経営資源の配分ということになります。
ホールディング経営においては、複数の事業会社に経営資源を配分することになり、それを適切におこなうためには経営計画が必要となります。
持株会社の経営者だけでなく、各事業会社の経営者と認識がズレない意思疎通を図るには、経営計画は有効な手段です。
経営計画を立てることで具体的な内容を可視化することができ、合理性や納得性を高めることができるからです。
そして、事業会社の経営計画と連動させることで、事業会社の成長を後押しすることができます。
②事業会社に不足している機能の補完
前回のコラムでお伝えしましたように、事業会社はホールディングスのグループ企業の一員となることで、持株会社が保有する機能を活用することができるようになります。
製造業の事例をご紹介しましたが、事業会社は資金調達、営業戦略・海外展開、人材採用、企画広報・デザイン、製品開発、製造技術開発、システム・ITといった持株会社が保有する機能を活用することができ、自社で不足する機能を補い、自社の強みを活かすことに注力して成長することが可能となります。
そのため、持株会社は、事業会社に不足している機能を補完できるように、必要な機能を強化させていくことが求められます。
③シェアードサービスによるサポート
シェアードサービスとは、人事や経理や情報などといったサービスの間接業務を1か所に集約することであり、持株会社がその機能を保有します。
会社が単独の場合、それぞれの会社が間接業務をこなす部署を保有する必要がありますが、ホールディングスに加わることで集約することが可能となります。
事業の経済性で考えると、単独で事業活動しているときよりも経済的な事業運営ができる「範囲の経済」を実現することとなります。
また、シェアードサービスは持株会社の収益源のひとつになります。
自ら稼ぐ力を持つことができ、そこで働く社員は受け身の仕事でなく、自発的に行動する機会をつくることにもなります。
ホールディング経営は、事業を育てるだけでなく、人も育てる経営スタイルといえます。