仕事柄、企業の役員会議や経営会議に参加することが多くあります。
しかし、その議論の中身は企業ごとによって大きく異なります。
それは、「業種が違うから」とか「企業規模が違うから」とかそういう話ではありません。
「今月、来月、よくて四半期先」といった目先の課題や問題点を議論するのか、あるいは、「3年先、5年先、なんなら10年先」といった将来に向けた課題や問題点を議論するのか、目線の長さで議論の中身が分かれるように感じています。
目先の話=短期目線の会社、将来の話=長期目線の会社として、以下話を進めていきます。
短期目線の会社において、「結果の話ばかりではなく、何年か先の将来の話をベースに、今何をしなければならないのかについても考えなければならない。」という話をすると、「なぜ、今そんな未来のことを考えなければならないのか。変化が激しい時代と言われているんだから、今考えてもしょうがないんじゃないか。」ということを言われることがあります。
それで業績好調で雰囲気の明るい会社であればいいのですが、往々にして短期目線の会社は、「業績不振、苦戦している、何となく先行きが暗い、閉塞感が漂っている」というような具合になっていることが多いです。
長期目線の会社では、先を見越して準備をします。
設備投資にしろ、採用活動にしろ、新しい事業を考えたり、技術開発についても、ある程度の時間をかけた状態で進めることができるため、当然質が良くて、競争優位性に繋がることが多いです。
差し迫っていないため、戦略の軌道修正も柔軟に行えます。
戦略に関する話だけでなく、事業承継や技能承継についても、長期目線の会社の方が早く着手する傾向にあります。
先を見越した準備と言う捉え方をしているからですね。
長期目線の会社の方がやはり「優良な会社、業績が良い会社、先が明るい、ワクワクするような会社」が多いのは間違いないです。
目線の話と直接は関係ないかもしれませんが、会社のミッションやビジョン、方針を明確にしながら、会社の財務情報含めて、従業員にオープンにしている会社も散見されます。
既存事業が好調な時に、数年先の新事業・新技術開発に着手=種まきをし、数年育てるようなことをサイクルとして実施できています。当然、社内の雰囲気も良好なところも多いですね。
一方で、短期目線の会社においては、例えばこんなことが論じられます。
・借入しようとしたけど、資金繰り表を作れと銀行に言われたから、大至急作らなきゃならない。
・人が突然やめちゃったんで、とりあえず人数合わせで誰でもいいから人手が欲しい。
・今期決算黒字にならないと、これ以上の借入が難しいらしいから、どうしても売上を上げるか、経費をさげなきゃいけない(残り3ケ月くらいで)。
・得意先から値下げの要請。それができなきゃ転注すると言われてしまった。
このように、「出来事」に対して「対処する」ということを繰り返しているように見受けられます。
こういった話をすると、「苦戦しているから、未来の話なんてそもそも考えられないんですよ。」という短期目線の会社の経営者の方がいらっしゃいます。
が、そういった会社においては業績好調の時であっても未来の話をしていません。
業績好調の時には、「今、仕事が忙しいから、そんな未来のことなんで考えている暇ないんだよ。」という言葉をよく聞きます。
ということは、短期目線の会社は、業績の良し悪しに関係なく、「将来のことを考えていない。」のだと思います。
目先の問題・出来事・心配事レベルを全て解決できなければ、将来のことは考えられないのでしょうか?
ニデック㈱(旧 日本電産㈱)の永守会長は、「目先慎重、長期楽観」ということをおっしゃっています。
目先のことで、問題や心配事が多くなるのはしょうがないわけですが、そればかりだと全然楽しくありません。
楽しく仕事をするためには、明るい将来、夢について妄想し、長期の目線で話をすることが大切なのだと考えます。
従業員の人達の立場に立ってみると、問題山積で心配事が多い普段業務において、楽しいことを考えるということは難しいわけです。
先行きが明るく、この会社にいると成長できそう、夢がある、この会社に居続けたいと感じてもらうためには、明るい未来のこと、将来の展望を経営者自らが声を大にして語らなければいけないのです。