今、世界は不確実(VUCA※)な時代と言われています。
経営革新、新規事業の必要性が喧伝されていますが、そのような中にあって、対話型のプロセスコンサルテーションによる伴走支援が注目されています。
プロセスコンサルテーションとは、経営革新といっても「何から手を付けて行けばいいのかわからない」といった問題の定義がはっきりしない、解決策がわからないような状況に対し、伴走支援をするうえで有効な考え方であり、伴走支援者が課題を持った企業との対話を通じて共同で課題を明確化し、解決策を導き出すというものです。
それに対し、従来の伴走支援は設備投資、販路開拓、資金繰り、事業継承、事業再生等、問題の定義が明確であり、既存の知識で解決が可能であり、高度な専門知識や技術もった支援者により解決されるというものでした。
E.H.シャインはプロセスコンサルテーションの10箇条を提唱しています。
前回は原則の1~5を解説しました。今回は残りの6~10を見ていきたいと思います。
「6.流れに身を任せよ」とは、クライアントは独自の歴史、文化を持っているものであり、伴走支援者の質問や行動によるクライアントの反応はさまざまです。
決め打ちせず、その反応により次の手段を決めるというものです。
「7.タイミングが極めて重要である」とは、伴走支援者のどのようなアクションもクライアントにとっては介入です。
うまくいく時もあれば失敗する時もあるでしょう。
常にクライアントを観察し、クライアントが聞く耳を持っていると思われる瞬間を常に探すことが重要ということです。
「8.真向から対決する介入については建設的な好機であると捉えよ」とは、タイミングの好機と思われた時には、伴走支援者はある種のリスクを犯して新たな洞察、選択肢、あるいは物の見方を提供する好機となるということです。
「9.全てはデータである。誤りは避けられないが、そこから学習せよ」とは、これまでの1~8までの原則を守ろうとしてきたとしても、伴走支援者はクライアントに予期せぬ、望ましくない反応を引き起こしてしまうことがあるかもしません。
失敗も重要な実績データとして学びの対象としなければならないということです。
「10.疑わしい時は問題を共有せよ」とは、伴走支援者が次に何をしたら良いかわからなくなったらクライアントの適当な人と一緒に相談するということです。
プロセスコンサルテーションの基本概念は伴走支援者とクライアントの共同診断であることを踏まえるとこれは全く適切なことです。
ただし、これは、1~9までの原則を守ってかなり作業が進み、伴走支援者とクライアントの共通認識がかなり進んだ状況のことであることです。
いかがでしたでしょうか。前回と今回2回にわたり昨今注目されているプロセスコンサルテーションについてそのエッセンスを紹介してきました。
以下に筆者がプロセスコンサルテーションの手法を使い直接支援した事例が紹介されています。ご興味ある方はご参考にしてください。
中小機構 伴走支援者のプラットフォーム 事例集
https://bansoushien.smrj.go.jp/case/detail_315/
中小機構ハンズオン事例集 2023年度(令和5年度)版
https://www.smrj.go.jp/sme/consulting/hands-on/jver9n0000006lcv-att/c7moap000000hqn2.pdf
(※VUCA: 「Volatility」「Uncertainty」「Complexity」「Ambiguity」の頭文字)
参考文献
・経営力再構築伴走支援の全国展開 令和4年5月 中小企業庁
・経営力再構築 伴走支援ガイドライン 中小機構
・Ē.H.シャイン著、稲葉元吉・尾川丈一訳/プロセス・コンサルテーション -援助関係を築くこと-/白桃書房