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自分家の狭い窓から眺めてるだけじゃない?投稿日 | 2024.7.30

 

仕事柄、新しい事業を始める企業や新しいプロダクトやサービスを開発する企業の相談が多く、そういった支援をする機会に多く恵まれています。

個人的には、事業再生や経営改善は好きではない苦手なので、新事業開発のお手伝いはとても楽しいです。

今回は、そのような新事業への参入、新商品・新サービス開発に取り組む企業によくある落とし穴について述べていきます。

 

新事業を始める企業でよく見られるのは、自社がどんな価値をターゲットに提供できるのか、十分な仮説を立てないまま、新サービスやプロダクトを作ってしまうケースです。

そういった企業は、自社でできること、自社の強みや長所に基づいて事業を考えてしまう=プロダクトアウトになることが多いです。

その際、市場環境分析は、一般的に知られているトレンドやインターネット上の情報といった“お手軽な情報”に留まることが多く、誤解を恐れずに言うと、「自社、あるいは自社の新事業」に都合のいい情報を集めてしまうことが多くなります。

その結果、「せまい窓から見える範囲内」で新しいことをやろうとします。

 

競合比較についても、機能が優れているか、価格が安いか等を比較する企業は多いですが、その機能は本当に求められているのか、その価格はどんな価値の上に成立しているのかまで、踏み込んだ比較をすることができません。

表面上の機能や価格面で、同じ土俵で戦おうとしてしまいます。

その理由は、自社の新事業・新商品・新サービスについて、ターゲットに聞くことなく机上で考えるばかりで、顧客視点に欠けているからです。

新しい事業やプロダクトを作る際、ターゲットが誰なのかを明確に認識していない企業が多いのが実情です。

 

スティーブ・ジョブズは、「ターゲットに、何が欲しいかを聞いてそれを与えるだけではいけない。」と述べています。

これは「新商品やサービスを作るために、ターゲットの声を一切聞くな。」という話ではないのです。

彼の真意は、ターゲットに「何が欲しいか?どうしてほしいか?」という未来のことを聞くのではなく、ターゲットを深く知ること=「なぜ購入したのか?何がうれしかったのか?何を経験しどう思ったのか?」を聴き、ターゲット自身もまだ気づいていない潜在的なニーズ(インサイト)の仮説を立てることにあります。

 

しかし、少なくない企業が、プロダクトやサービスが完成した後に顧客を探し始めるため、ターゲットが見つからない、ニーズに全く合致しないという問題に頻繁に出くわします。

新しい事業やプロダクトを作る際には、完成させる前にターゲットの話を聞きながら仮説を検証しながら作り込むべきですが、それがなかなかできません。

 

「新しいプロダクトだから、そもそも聞ける相手との接点が無い。」や「既存顧客向けの新商品だけど、関係性が築けていないから話を聞かせてもらえない。」のは言い訳に過ぎません。

それではいつまで経っても、ターゲットの解像度は上がらず、仮説精度も向上しません、というか仮説らしい仮説すら出てきません。

既存のネットワークや人脈を駆使したり、金融機関や支援機関に依頼したり、ターゲット候補との接点づくりは、その気になればいくらでもできます。

ビザスクのような見込客インタビューサービスもたくさんあります。

 

ターゲットのインサイトを把握するためには、繰り返し話をすることがとても重要です。

背景にある思い(期待や課題)は会社ごと、役職や立場ごとによって異なるため、それぞれについて深掘りが必要です。

それぞれの視点からの理解を深めることで、より正確な仮説を立てることができ、その仮説をもとにプロダクトやサービスを磨き上げていくことができます。

結果として、ターゲットの潜在的なニーズを捉えた、競争力のある商品やサービスを提供できるようになるのです。

 

新事業や新商品・サービスの開発は、企業の成長と革新にとって不可欠です。

しかし、その道のりには多くのチャレンジが待ち受けています。

これまで述べてきた通り、ターゲットインサイトの把握とそれに基づく開発プロセスは、成功への重要な鍵となります。

仮説を立て、ターゲットの声を聞き、繰り返し検証することで、潜在的なニーズを見つけ出し、はじめて競争力のある商品やサービスを提供できるようになります。

私たちは、お客様と緊密に連携しながら、それぞれの企業や事業に最適なアプローチを見出し、実践的なサポートを提供いたします。

新しい価値を創造し、競争力のある事業を展開したいとお考えの方は、ぜひご相談ください。

中小企業診断士 森 竜也(筆者のプロフィールはコチラ)

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