「静かな退職」という言葉を最近よく経済紙等で見かけます。2022年にアメリカのキャリアコーチが発信し始めた「Quiet Quitting」の和約で、会社を辞めるつもりはないものの、出世を目指してがむしゃらに働きはせず、最低限やるべき業務をやるだけの状態とされています。
「静かな退職」を実践する人の年代別割合でみると、最多は40~44歳で5.6%、次いで25歳~29歳と35歳~39歳がそれぞれ4.4%。45歳~49歳が4.3%と続いています。
50歳~54歳も年々上昇し、このデータを見る限り、どの年代にも一定数いることがわかります。
また、株式会社マイナビの「正社員のワークライフ・インテグレーション調査2024年版」の調査によれば、20代~50代の正社員48.2%の正社員が「静かな退職をしている」自覚をしているという結果もでています。
静かな退職とサイレント退職の違いは、退職するかしないかが大きな違いです。
サイレント退職は、仕事に対する悩みや不安を抱え込みすぎて、突然の退職に至りますが、静かな退職は退職することはありません。
静かな退職が増加している原因としては、働き方が多様化し、「仕事とプライべートの両方を充実させたい」「ワークバランスを重視したい」と考える人が増えていることは明らかですが、組織の中に目指したいロールモデルが存在しないことであったり、ロールモデルが見つかったとしても、業務量と待遇が見合っていないと感じ、特に管理職にはなりたくないという考え方が拡がっているのも要因の1つです。
かたや、人的資本経営の考え方が徐々に浸透し、「エンゲージメントを高める」ための教育はどの企業も増えているのが最近の傾向です。
主体的に考え行動する人材を増やしていきたいことと相反して「静かな退職」を選択する人が増えている実態は、とても大きな課題だと感じます。
その課題を解決するためには、人事制度改革など、評価制度を変えることも大切ですが、個々の社員の方々のキャリア形成を再設計させることや、リスキリングを活性化し、組織内の新たな役割提案をすることも大切だと思います。
よく受講生からは、「正当な評価をされたい」「自分の可能性が閉ざされている気がする」などの言葉を聞きます。
そのような言葉を聞くと、急に「静かな退職」になるわけでも、最初から「静かな退職」を選択して入社してくるわけでもないと感じます。
時間がたつにつれ、組織の硬直感や、頑張っても報われない組織風土が、心理的な無力感や無関心に繋がっていくのではないかと。
働く人の幸せの7つの因子は、
①自己成長
②リフレッシュ
③チームワーク
④役割認識
⑤他者承認
⑥他者貢献
⑦自己裁量
と言われています。
「幸せに働く」は「幸せに生きる」ことに影響し、仕事をすることは決してつまらないことではないと気づいていただくためにも、組織が変わる時代なのではないでしょうか。