毎年、この季節は、来年度の内定者がどのくらいかを人事部の方々とお話をします。
今年も採用が厳しかったですという声を聞くようになってから、もう10年くらいたっています。
リーマンショックで急下降した有効求人倍率の「底」のボトムは2009年8月の0.42倍。
そこから上昇に転じ、2013年10月には、0.98倍に。1.00倍で均衡したのが2013年11月。
その翌月2013年12月には、1.03倍で「売り手市場」に転換。
以後は、コロナ前後に多少影響はありましたが、1.00倍を割ることなく推移しています。
人手不足であるという事実は、現在も変わりはありませんが、2025年に入り、大手企業のリストラのニュースを多く目にするようになっています。
東京商工リサーチの調査によれば、2025年1月から8月までに「早期・希望退職者を募集」した上場企業は31社。対象人数は10,108人(前年同期7,284人)と前年同期の約1.4倍に増加しています。
パナソニック、日産、ジャパンディスプレイ、三菱電機といった大手メーカーが大型の人員削減を発表しており、アメリカとの関税交渉は一定の目途がついたものの、製造業を中心に企業の人員削減に拍車がかかる可能性も指摘されています。
また業績が良いテクノロジー業界で新たな従業員解雇の波が押し寄せています。
Google、Amazon、IBMなども大規模な人員整理を進めており、この背景には、AIやクラウドといった成長分野への投資を加速させるため、既存部門の効率化を進める動きがあるからです。
それを象徴するメタのマーク・ザッカーバーグCEOは、「パフォーマンス管理の基準を引き上げ、低業績者をより迅速に退出させることを決定した」と社内メモで通知しています。
この動きは、シリコンバレーの伝統的な人財戦略からの大きな転換を意味しています。
今までは競合他社への人材流出を防ぐため、生産性が十分でない従業員であっても高給で引き留める傾向から、業界の収益構造が変化するなか、より効率的な組織運営へと舵を切り始めていると言えるでしょう。
「人材戦略」とは、企業が長期的な成功を達成するために、適切な人材を確保し、育成し、活用するための計画や方法を指します。
単なる人事施策ではなく、企業全体の戦略と連動し、組織の成長と競争力の向上を目指す包括的な取り組みです。
どのような人材を採用するのか。
それは新卒一括採用だけに重きをおいてよいのか、それとも新たな採用を模索するのか。
そして、今後、どのような収益構造を目指していくのか。
そのためには、どのような育成プランが必要で、組織形態が必要となるのか。
今までは、どの組織も似たような採用・育成・形態で収益を確保できたのかもしれませんが、これからの時代は、明確な「人材戦略」なくして、持続可能な成長に繋がらないのではないでしょうか。
人的資本経営も、2023年が「開示元年」だとすれば、すでに「実践」することが大切になってきています。