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「休まないオヤジ社長」と「休みたい後継者」投稿日 | 2021.7.11

父親から息子や娘へ事業承継する会社へ行くと、時々こんな話を後継者から聞かされるときがあります。

 

後継者「ウチの社長(オヤジ)、一年中ほぼ休みなしで働いていて、働きすぎだと思うんですよね・・・

社長がアレだと、自分や社員たちも休みづらくて・・・

自分が社長の代になったら、もっと休みが取れる会社にしたいと思うんですよね・・・」

こうしたケース、意外と多いものです。

客観的なコンサルの立場の佐原から聞くと、どちらも正しく、どちらも正しくない。

そして両者どちらの気持ちも痛いほどわかるのです。

 

オヤジ社長のなかでも創業社長の場合、事業を全くのゼロから起ち上げて今の会社の礎を築いてきたはずです。

ゼロというのは、売上もゼロなら社員もゼロ、設備もゼロ、無い無い尽くしの創業期から現在のように会社を成長させてきた道のりは相当な努力を要したはずです。

創業社長が営業マンとして売上を確保し、設備投資やそのための金融機関調整を行い、経理や資金繰り管理も人材の採用や教育も行う、といった具合に。

土日だから休日だから、と言って休みをそうそう取っていられる状況ではなかったのではないかと思われます。

そうした日々の努力があって今の会社の状況があるわけですし、そうした生活習慣や仕事習慣が骨髄まで染み付いているからこそ、「休みなんか取っていられない」という感覚なのでしょう。

より正確に言うと「生きること=事業に身を捧げること」であり、その間には「休日を取る」という概念すら存在しないのかもしれません。

だから、何十年にも亘って身に染み付いた習慣のなかで、急に休みを取るように言われてもそれは無理な話なのかもしれません。

そして、そうやって事業に全身全霊を捧げるなかで利益を確保している事業であれば、仕事に対する姿勢や行動を緩めた瞬間に赤字経営に転落してしまうのではないか、という懸念を抱いていることでしょう。

 

一方で、後継者の「もっと休みを取れる会社にしたい」という思い。

これも佐原の立場ではその気持ちがよくわかります。

なぜなら、この人不足の時代に、休みがなかなか取れない会社では若い人材の採用が難しくなってしまうからです。

そして、仕事だけに生きるのではなく、家族と過ごす時間やレジャーの時間をつくりだして人生を充実させていきたい、という思いからくるものでしょう。

何と言っても、今の人の仕事観や人生観が変わってきています。

高度成長期やバブル期に仕事をして過ごしてきたオヤジ社長の世代は、仕事量も豊富で仕事をすればするほど会社も事業も成長でき、収入も増えていくという時代だったでしょう。

しかし、バブル期以降の30年の低成長時代を過ごしてきた40歳代中盤より若い世代は、仕事もそこそこ、プライベートもそこそこでやっていく人生観になっているように思われます。

だから、オヤジ社長の様に仕事ばかりで終わる人生ではなく、もっと休みを取れる会社にしたいという気持ちはよくわかります。

 

そうしないと、今いる社員達が会社を離れていってしまうのではないかという恐れの気持ちも理解できます。

こうした両者の気持ちはそれぞれ佐原もわかります。

しかし大前提は、「会社が収益と資金を確保し続け、存続し続けられる」ということです。

いくら社員が自由に休みを取れるような会社になっても、休んだ分だけ生産性が下がり、お客様からの信頼を失い、売上や利益が減ってしまったのでは属する会社の存在そのものが失われてしまうかもしれません。

だから、「休みを取れる会社にしたい」その気持ちはわかりますが、設備や社員の生産性を上げて今より少ない労働時間でも利益を上げられる体制を整えてからというのが順序であるように感じています。

また、「少ない労働時間で収益を上げる」ということは、それだけ経営管理にも高度な経営スキルや工夫が求められます。

そこに至る過程では、後継者が社長になったときに社員には休みをより多く取らせても、後継社長はその仕組みを構築するまでの間はより多くの時間を事業活動に捧げる覚悟が必要になるでしょう。

 

「休みをより多く取れる会社にしたい」

後継社長のこの思いには、「社員たちにより多く休みを取ってもらうために、その仕組みをつくるまでの間は自分が事業に身を捧げる」という覚悟が必要であるように感じています。

つまり、社員にはより多く休んでもらったとしても、後継者である自分一人だけは休み無しで働く覚悟という意味です。

売上も利益も減少してしまっている状況で、それで単純に「休みを取りたい」と欲する後継者であれば、それは単なる「危機意識の欠如」に過ぎません。

危機意識の欠如は、会社の経営難と倒産の時期を早めることになるのです。

 

企業アドバイザー 佐原啓泰(筆者のプロフィールはコチラ)

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