社員の給与を上げるためには、その原資が必要です。
会社が生み出した付加価値が原資となります。
付加価値とは、売上高から部品・材料費、外注加工費などの外部への流出費用を差し引いたものであり、社内で生み出した価値のことです。
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費(設備投資費)と計算する場合もあります。
その付加価値から人材や設備に投資するわけです。
そして、付加価値からどのぐらい人材に投資したか、すなわち付加価値に占める人件費の割合が労働分配率です。
労働分配率の目安は業種によって異なります。
労働分配率が高ければ良い、あるいは低ければ良いというものでなく、自社において適正な割合であることが望まれるものです。
いずれにせよ、人件費を上げていくには、原資となる付加価値を高めなければなりません。
働き方改革関連法が2019年4月1日から施行されています。
その「働き方改革」とは、働く方の個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
具体的な施策は以下の3つです。
①残業の上限規制
②年次有給休暇の確実な取得
③正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止
法律を遵守することはもちろん必要です。
しかし、法律を守るだけでは「働き方改革」は実現しません。
時間当たり労働生産性の国際比較データがあります。
公益財団法人日本生産性本部が公表している「労働生産性の国際比較」から確認することができます。
OECD(経済協力開発機構)加盟国の比較データです。
各国の時間当たり労働生産性として、GDPを就業者数と労働時間かけたもので割って算出しています。
日本はOECD加盟38カ国中27位(2022年データ)であり、上位ではありません。
人、モノ、カネ、情報が世界各国の間を移動している現在、国の労働生産性を高めていくことが持続的に成長していくためには必要不可欠です。
そして、時間当たり労働生産性を企業に置き換えると、
労働生産性=付加価値/(社員数×労働時間)
で算出できます。
分母の「社員数×労働時間」はいわゆる「工数」です。
仕事をより少ない人数で出来ないか、より短い時間で出来ないかと創意工夫することが求められます。
しかし、生まれた余力を有効に活用しないと意味がありません。
ただ遊んでいるだけになってしまいます。
その時間を教育の時間とする、新製品のアイデアを考える時間とするなど、新たな「付加価値」を生み出す源泉とすることが大事です。
「付加価値」を高めていく長期的な取り組みが、企業を持続的に成長させることにつながります。