「福祉関連事業を行うので、NPO法人を設立したい。」「スポーツ関連事業を行うので、一般社団法人を設立したい。」等、個人事業ではなく法人として活動を計画する相談者は少なくありません。
もちろん、それらの声に応えるべくヒアリングを進めるのですが、果たして、NPO法人や一般社団法人等の制度を何処迄理解しているかと言えば、残念なケースはよくあります。
例えば、NPO法人設立を希望する相談者へ、毎事業年度初めの三月以内に前事業年度の事業報告書等を作成し、全ての事務所において備置き、その社員及び利害関係者に閲覧させる義務を負うとか、毎事業年度一回、事業報告書等を所轄庁に提出する必要があります等と説明すると、そのボリュームに圧倒されてしまいます。
逆に、一般社団法人だと、少なくともそのような義務は回避されますし、圧倒的とされる事務作業や情報公開から解放されることになります。
では、両法人を比較したとき、事業活動は異なるのかと言えば、答えはNOです。
つまり、(制限はありますが)NPO法人、一般社団法人のどちらでも事業活動は行えるのです。
「活動の実態は何かを見極める」
では、何故NPO法人に拘るクライアントが多いのでしょう。
NPO法人が脚光を浴びたのは、阪神淡路大震災以降です。
1995年に起きたのでこの年をNPO元年と呼ぶこともあります。
その3年後に法律が整備され、特定非営利活動促進法が2002年5月に施行され、その第一条(目的)には 「特定非営利活動を行う団体に対して、簡単、迅速に法人格を付与し、公益の促進に寄与できるようにし、市民が行う自由な社会貢献活動を促進し、もって公益の促進に寄与する」 と記されました。
社会貢献活動=NPO法人という図式になりやすいのはこのせいかもしれません。
一方、一般社団法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律)は目的なる条文がありません。
砕けた言い方をしますと、定款に記載されている事項であれば、株式会社と同様に、様々な活動ができるというわけです。
因みに、NPO法人の活動の種類は限定されており、保健、医療又は福祉の増進を図る活動、社会教育の推進を図る活動、まちづくりの推進を図る活動等、現在20の活動です。
「実務的な問題として」
NPO法人はその他、役員の親族規定、所轄庁への事業報告や情報公開等の義務があり、活動内容をオープンにしなければならない等制限が多く、一般社団法人にはそれらはありません。
今回のクライアントは、スポーツ教室を中心に活動を行うという事でした。
そうなると、特に注目しておきたいのが『税法上の優遇』です。
収益事業に関係のない寄付や補助金、対価性のない会費は課税の対象とはなりません。
しかし、活動の内容によって、課税、非課税が左右されます。
これから法人化しようしているクライアントが運営する任意団体の活動が、どちらに当てはまるかも確認する必要があります。
活動内容やメリットデメリットの比較を十分に検討すると、案外当初とは異なった法人が誕生するのかも知れませんね。