『差別化』マーケティングの限界
マーケティングの基本戦略として定跡となった「差別化」ですが、技術の平均化や急速なデジタル化により、似たような製品が蔓延する現在において、他社とは圧倒的に違う付加価値を持つ商品開発はかなり困難な状況と言えるでしょう。
にもかかわらず、「集客するには他社との差別化が大事」という思い込みから、無意味な差別化を模索し続けている企業も依然として数多く存在しています。
今回は、巷にあふれる意味のない差別化が生まれる理由について考察します。
意味のない『差別化の罠』に陥るパターン
差別化の目的は、競合他社との間に明確な優位性をつくることです。
“同じような商品”を売り出しているメーカーが差別化を打ち出したキャンペーンを行い、他社との違いを実感した消費者に商品を選んでもらう。これが差別化の基本的な戦略です。
でも・・・、もともと同じような商品を売り出しているのに、消費者が納得するほど明確な差別化を打ち出すことができるでしょうか? もちろん答えはノーです。
売り手側がどんなに張り切って差別化を打ち出しても、消費者にとっては「認識できない程度の小さな違い」だったり、「まったくニーズのない機能の差」として認識され、記憶に残ることもないでしょう。
企業側から押し付ける差別化の無意味さ
このような「誰も喜ばない差別化」=「大して違いが分からない差別化」は、顧客の立場で考えれば誰もが無意味だと気づくはずです。
しかし、企業の中に閉じこもり、競合との違いをアピールすることだけに囚われていると、往々にしてこの「意味のない差別化の罠」に陥ってしまいます。
厄介なことにこの「意味のない差別化アピール」は社内向けの提案だと、とても有効に使うことができてしまいます。
『他社製品より0%向上』や『0%安い』など、その実績や効果の違いは“目に見える評価”として肯定的に捉えられるでしょう。
ただし、それは社内だけで通用する論理であって、消費者(顧客)が求めている「有効な差別化」とは全く違うものだということに気づかなくてはいけません。
競争しないための『差別化』、という戦略
そもそも、中小企業の場合、競合にはない差別化を打ち出すという戦略は、「常に強い大手企業と同じマーケットで競争する」ことを意味し、必ずしも有効なシナリオではありません。
差別化を打ち出したプロモーションを行うのなら、強者と正面からぶつかる戦略を取るのではなく、「この分野ならうちにお任せください」という住み分けを明確化するために「差別化」を使うのがベストではないでしょうか。
アメリカの経営学者マイケル・ポーター(M.E.ポーター)によって提唱された「差別化」の定義は、単に競合他社と違うものを作ればいいという安易なものではなく、価格が高くても買ってもらえる優位性のある状態を指すものです。
特に中小企業の場合だと『地元企業ならではの手厚いアフターサービス』や『この商品だけなら地域No.1』など、住み分けや企業方針を明確化した差別化戦略を行うことが重要です。
「他と比べられずに、真っ先に選ばれ続ける価値」を明確に示すことこそ、これからの差別化戦略のポイントになると思います。