この時期は、新入社員の皆さんがそろそろ研修を終え、現場に配属されますが、今年から初任給を上げたという企業も多いかと思います。
私も4月は1年生の研修に多く入りますが、今年もすでにメンタル不調を訴えたり、退職を決めているとう1年生もいると聞いています。
退職代行サービスの依頼も年々増え続け、厚生労働省の調査によると、令和4年に入社した方の12.0%が新卒1年目で実際に仕事を辞めています。
退職理由の要因は、
①心身に不調をきたしている
②ブラック企業だった
③ハラスメントに耐えられない
④人間関係で悩んでいる
⑤2,3年後を想像して良い未来が想像できない
⑥今の仕事を続ける特別な理由がない
などが挙げられています。
平成30年に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立し、「非正規雇用の処遇改善」、「賃金引上げと労働生産性向上」、「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」などが各企業で取り組まれ、働き方や仕事のやり方が変革されてきました。
新入社員の方々はこのような環境で社会人となっていくのですが、働き方改革で生産性が上がったかというと、その実感を感じられないという金融機関さんも多いと感じています。失敗に陥りやすい原因としては、「成果よりも労働時間を重視してしまう」「ペーパレス化が進んでいない」「従業員への周知不足」「危機感が乏しい」「企業の課題と合っていない」などが挙げられています。
特に、残業削減を目標にしても、仕事の量が変わらなければ、労働環境の改善には繋がりません。目的は、残業削減というよりも、より「生産性の高い働き方」であるのにもかかわらず、なかなかその課題に取り組めなかった現状があります。
皆さんは、「ゆるいブラック企業」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
この言葉は、主に若手のビジネスパーソンの間でトレンドになっています。
ゆるいブラック企業とは、ブラック企業と見なされるような長時間労働やパワハラなどの法令違反とは明確に距離を置き、働きやすい環境づくりを志向する一方で、「仕事にやりがいがない」「スキルアップできる環境ではない」とある種の物足りなさが指摘されている企業のことです。
「ぬるま湯」のような労働環境に慣れてしまうと、人は成長意欲やモチベーションも沸きづらくなり、お給料さえもらえればという考え方に慣れてしまいます。
ただ、やる気のある若手社員にとっては、キャリア形成やスキルアップが望めないため、自身の市場価値も高まらず、そのあせりから転職を考えるという傾向があります。
これは私見ですが、ゆるさを求める20代と成長を求める20代の価値観格差が年々広がっているように思うのです。
皆さんも経験があると思いますが、20代の仕事における経験は必ず、30代、40代のキャリア形成に繋がっていきます。
だからこそ、20代には、「働く」という現実をしっかりと認識してもらいたいのです。ゆるさだけでは、何十年もキャリアを伸ばし続けることはできません。
今一度、働き方改革の本質をしっかり見直すことが、これからの若手社員の未来を変えていくことに繋がるのではないでしょうか。