私が20代で営業の仕事をしていた頃、いつも営業部長は、朝、ゆっくりコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。
私の最初の仕事は、営業部全員のコーヒーを淹れることからだった。
全員の好みを把握して、コップをお湯であたため、丁寧に1杯1杯淹れるのだ。
今は懐かしい昭和の現風景かもしれない。
現在のように、朝から戦闘モードで仕事がスタートする時代ではなかった。
だからこそ、私は、現在のシニア世代の人たちを尊敬する。
シニア世代になれば、もう少しゆっくりできるかと思いきや、時代の変化で、プレーイングマネジャーはあたりまえとなり、常に時間との闘いの中で、「やることリスト」は、毎日増え続ける。
ただ、この時代だからこそ、シニア世代のチャンスは拡がったとも言える。
とにかく人生が長いのだ。
働く年齢もどんどん伸び、近い将来、70歳まで、いや75歳まで働くことが通常になるかもしれない。
今までは、大学を卒業して、就職して、老後を迎えるという3つのカテゴリーで、ほとんどの人がライフプランを立てていた。
しかし現在は、そうではいかない。
限りある時間だとは思うが、その時間がどんどん長くなってきている。
だからこそ、その時間を前向きに幸せな時間を過ごすための戦略がシニア世代には必要となってきた。
戦略の1つとして自分のブランディング化という考え方がある。
キャリアはかけ算になっていて、例えば、自分の場合、創業するまでは、「営業」の仕事をして創業してからは「コンサルタント」「研修講師」としてキャリアをかけ算してきた。
そして、現在は若手の優秀なコンサルタントを「プロデュース」する仕事に挑戦している。
コンテンツとしては4つのかけ算ということになる。
かけ算が増えるたびに、「希少性」が高まってくる。
つまり、自分のブランディングがしやすくなる。
シニア世代の方々に是非、お勧めしたいことは、まずご自身のキャリアの棚卸をしていただきたいのだ。
そして、これから残り時間で、どのようなコンテンツを育てるか、かけ算できる戦略を立て、時間を有効に活用していただきたいと思っている。
1万時間の法則とよく言われるが、物事、大抵、そのことに1万時間費やせば、その道の専門性を磨けるという。
60歳から75歳まででも6万時間、自分の時間を費やせる。
スタートするのは、決して遅くないのが、現在のシニア世代だと言える。
働くことは、成熟社会になった日本では、「苦行」ではなく「幸せ」になっていることに気づいていらっしゃるだろうか。
心理学では、人生の幸せの要因に「仕事があること」が大切だと分析されている。
私自身も30代の頃に感じていた仕事に対する考え方が、随分と変化してきた。
「仕事」をすることは、まるで息をするかのように日常にはなくてはならない時間だと思える。
仕事の仕方は、年齢を重ねることで変化していくことはあたり前ではあるが、仕事を通じて、得られるものの大きさを実感している。
残りの人生を、どう生きるか、もし「仕事」をするのであれば、毎日、幸せな気持ちで取り組みたいと思っている。
ようやくキャリアを積み重ねたことで「貢献」という言葉がすっと入ってくるようにもなった。
他者に貢献すればするほど、自分自身が自立できる。
これは、「真理」なのかもしれない。
シニア世代の皆さんにエールを送りたい。これからまた新しい「幸せの形」をつくれますよと。