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スローダウンの時代へ投稿日 | 2023.12.5

2023年の最後のコラムに何を書こうかと、この1年を振り返った時に、ふと頭に浮かんだ言葉が「20世紀の終焉」でした。

20世紀の「加速の時代」がようやく終わりを告げようとしている出来事が多く事象として現れ、私たちはもう一度「考える」時代へと突入しています。

 

2014年に世界に影響を及ぼした「21世紀の資本」(トマ・ピケティ著)の中でこのような一節があります。

 

重要な点は、世界の技術的な最前線にいる国で、一人当たりの産出成長率が長期にわたり年率1.5パーセントを上回った国の歴史的事例はひとつもない、ということだ。

過去数十年を見ると、最富裕国の成長率はもっと低くなっている。

1990年から2012年にかけて一人当たりの産出は西欧で、1.6パーセント、北米では1.4パーセント、日本では0.7パーセントの成長率だった。

このさき議論を進めるにあたり、この現実をぜひとも念頭においてほしい。

多くの人は、成長というのは最低でも年3~4パーセントであるべきだと思っているからだ。

すでに、述べた通り、歴史的にも論理的にも、これは幻想にすぎない。

-トマ・ピケティ「21世紀の資本」

 

あらゆるものが加速している。

そして加速はとてもよいことである。といった、幻想からようやく卒業する時代がきたとも言えます。

今年、何度も講演した「人的資本経営」という考え方も、「人づくり」という長期的な目線で語られています。

日本の経済成長のスローダウンは、世界の先頭を走っていて、私たちは今までの常識では通用しない「今」をしっかりと見つめ、向き合わなければならない現実を捉える必要があります。

 

多くの企業が高い成長目標を掲げ、働く人々が心身ともに疲れ果て、目の前の仕事ばかりに追われている日常が、「正常」ではないとしたら、これから私たちは何を目指せばよいのでしょうか。

これからの目的を再度、深く考え新たな「パーパス」を掲げることが問われています。

「成長」とは数字だけの「成長」ではなく、「心の成長」がこれからの時代のキーワードになるのではないかと思います。

「成熟」「平和」「安定」をいい意味で日本は取り戻す必要があるのではないでしょうか。

本質的な「豊かさ」を考えると、経済成長だけでなく、人としてどう生きていくかを問われる時代になります。

もう増加する必要がないものを冷静に見極めること。

そして、文化や知性はこれからも変化し、より私たちに影響を及ぼすようになっていくのではないでしょうか。

スローダウンの時代が加速していけば、お互いがお互いを気づかうようになり、あらゆることを疑い、考える時間が増えていきます。

そのような未来は、巧妙なごまかしや人間の心理を利用した手口は通用しなくなります。

だからこそ、「真」のビジネスが生まれ、「善」の行いが増え、「美」の出会いや場所が増えていくはずです。

2024年からの未来を、私たち1人1人が創り上げていきましょう。

 

企業アドバイザー 宮道京子(筆者のプロフィールはコチラ)

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