「疑うなかれ。懸命な行動力のある小さな集団が世界をも変革できるということを。
まさに彼らこそが今まで世界を変えてきたのだから」―マーガレット・ミード
今年の夏の甲子園、慶應義塾高校が1916年以来、107年ぶりに優勝を遂げました。
森林監督は慶應普通部(中学)、慶應高校時代は野球部で選手でしたが、大学では学生コーチに専念、一般企業勤務ののち、教員免許取得と、コーチングを学ぶため筑波大学、大学院で学んだ後に、慶應幼稚舎(小学校)経論になるとともに母校、慶應高校野球部の指導者となりました。
野球部なのに、長髪ということが話題になりましたが、私は圧倒的な教育の質の高さに驚かされました。
今、「人的資本経営」の考えをベースに、人づくり、そして組織のエンゲージメントを高めることが課題となっていますが、すでにスポーツの世界ではそれが実現しているように見えます。
慶應高校野球部は、1991年上田誠監督が就任してから「エンジョイベースボール」を掲げて「プレーを楽しむ」「自分で考える」野球を推進してきました。
そして、その考え方が、チームのパーパスとして、定着し、「本格的に、一生懸命に取り組む」姿勢ができています。そして彼らは「自分の言葉」で話すことができるのです。
まさに、一般企業が目指す、若手の育成の姿がすでに慶應高校野球部にはあるのです。
森林監督の言葉で、「極論すれば、学生たちがすべて考え、いるのかいないのか分からない監督が私の理想です。
私はそうした環境を作るのが仕事」という名言があります。
この言葉を実現するには、今の組織のマネジメントをまるで逆方向に転換する必要あり、この信念に基づき監督自らが、変わり続ける必要があります。
その姿を見て、選手は自ら考え動くことができるのではないでしょうか。
森林監督は、コーチングと心理学をチームマネジメントに取り入れています。
そのなかでチームコーチングという考え方が根付いているように見えます。チームコーチの果たす役割は、
①チームがアイデンティティを見つけられるように支援する。
②チームが何を達成したいか、なぜ達成したいかを明らかにできるよう手助けする
③チームにとって重要なプロセスを理解できるように支援する。
④チームが、チーム内に潜在する創造性にアクセスできるように支援する
⑤チームが集団的な回復力を育めるよう手助けする。チームの感情状態の改善に気を配り、彼らが成功や挫折に一喜一憂しない方法を学べるように手助けする。
⑥チームがそその進歩を観察できるように支援する。単にこなした仕事量だけではなく、彼らの学習プロセスの質をさまざまな視点から評価をしてもらい、進捗状況を客観的に見つめ、チームワークを高めるための支援にもつながる。
この内容は、チームコーチングの「あり方」を定義したものですが、やはり「指示・命令」ではなく「支援」「手助け」がこれからのマネジメントには必要だと確信します。