人の生産性に関する指標に「労働分配率」があります。
今回は、この労働分配率について掘り下げます。
労働分配率とは、企業が生み出した付加価値の中で、役員や従業員の人件費がどの程度あるかを表す指標のことです。
厚生労働省が発表している産業別に見た労働分配率のデータは以下のとおりです。
(直近の2021年第4四半期のデータ)
全産業(除く金融保険業) 63%
製造業 55%
情報通信業 61%
建設業 66%
運輸業・郵便業 82%
卸売業・小売業 66%
サービス業 72%
医療・福祉業 83%
【算出方法】
労働分配率=人件費÷付加価値額
人件費=役員給与+役員賞与+従業員給与+従業員賞与+福利厚生費
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
労働分配率は産業によって異なり、単純に高ければよいとか、低ければよいというものではありません。
自社にとって適正な労働分配率を目安として設定し、その数値に対して高いか低いかをチェックして必要な手を打つことが求められます。
付加価値額は、粗利益額とみなすことができます。
シンプルに考えると、労働分配率は、企業が稼いだ粗利益額のうち、どれだけの割合を人件費としているかということです。
産業によって労働分配率は異なりますが、おおよそ粗利益の60%が人件費であるということになります。
賃上げをするためには原資が必要です。
その原資は粗利益額です。
よって粗利益額を高めることが必要であり、それも社員一人当たりの粗利益を高めなければなりません。
1人当たり粗利益額が1,500万円で、労働分配率が60%の場合は、社員の平均年収は900万円となります。
1人当たり粗利益額が1,000万円で、労働分配率が60%の場合は、社員の平均年収は600万円となります。
フレデリック・ハーズバーグ氏の『二要因理論』という考え方があります。
「動機づけ要因」と「衛生要因」の理論です。
「動機づけ要因」とは、満たされると満足度が上がる要因のことで、モチベーションを上げるための要因です。
例として、やりがいのある仕事、他人からの評価、仕事への責任、自己成長などがあります。
もう一方の「衛生要因」とは、不足すると満足度が下がる要因のことでで、モチベーションを下げないための要因です。
例として、給料(金銭的報酬)、ステータス、職の安定、作業条件などがあります。
賃上げは「衛生要因」となります。
賃上げを実施することは、モチベーションを上げるためでなく、モチベーションを下げないための要因と考え、経営者の方々が取り組まれています。