今世界は不確実(VUCA※)な時代と言われています。
経営革新、新規事業の必要性が喧伝されていますが、そのような中にあって、対話型のプロセスコンサルテーションによる伴走支援が注目されています。
プロセスコンサルテーションとは、経営革新といっても「何から手を付けて行けばいいのかわからない」といった問題の定義がはっきりしない、解決策がわからないような状況に対し、伴走支援をするうえで有効な考え方であり、伴走支援者が課題を持った企業との対話を通じて共同で課題を明確化し、解決策を導き出すというものです。
それに対し、従来の伴走支援は設備投資、販路開拓、資金繰り、事業継承、事業再生等、問題の定義が明確であり、既存の知識で解決が可能であり、高度な専門知識や技術もった支援者により解決されるというものでした。
プロセスコンサルテーションの提唱者であるE.H.シャインは経営支援を、専門家型、医師-患者型、プロセスコンサルテーション型に分類しています。
専門家型は明確な課題に対し、専門家が解決策(ソリューション)を提供します。
解決策の実行は支援者が行うことも、当事者が行うこともあります。
医師-患者型は現状を把握するためのデータを調査し、それに基づき課題を支援者が明確化し、解決策を提供します。
それを実行するのは当事者です。
また、プロセスコンサルテーション型は課題の明確化は支援者と当事者が協同で行い、解決策は当事者が主体となって(時に支援者と共同で)策定、計画し、それを当事者が実行します。
E.H.シャインは専門家型と医師-患者型を解決型アプローチ、プロセスコンサルテーション型を対話型と分類しています。
E.H.シャインは支援者が守らなければならないプロセスコンサルテーションの原則を次の10箇条にまとめて説明しています。
順に補足説明しますと、「1.常に力になろうとせよ。」はプロセスコンサルテーションに限らず、支援者が当事者との信頼関係を築くには自明のことと思います。
「2.常に目の前の現実と接触を保て。」とは現実の情報をしっかり把握して机上の空論にならないようにということで、これも自明のことです。
「3.あなたの無知にアクセスせよ」とは支援を始める際に、支援者が知らない、わからない領域を明らかにして、専門家モードで支援すべきか、プロセスコンサルテーションモードで支援すべきかを選択しなければならないということです。
「4.あなたのすることはどれも介入である。」とは、支援者が当事者に対して行うすべてのアクションは、それが感謝になるか、おせっかいになるか、迷惑になるかいずれにせよ当事者へなんらかの影響を及ぼすので、それが支援の関係に好影響だったかどうかを評価しなければならないということです。
「5.問題をかかえ、解決策を握っているのはクライアントである。」とはプロセスコンサルテーションの本質を現した言葉です。
つまり、支援者はクライアント(当事者)との信頼関係を基に、クライアント自身の外部内部や環境で生じている出来事のプロセスに気づき、理解し、それに沿った行動ができるようになり、結果、クライアントが定義した課題が解決されるということです。
今回はこれくらいにして、次回は6~10の原則を解説し、対話型アプローチの具体的進め方である評価的質問についてみていきたいと思います。
(※VUCA: 「Volatility」「Uncertainty」「Complexity」「Ambiguity」の頭文字)
参考文献
・経営力再構築伴走支援の全国展開 令和4年5月 中小企業庁
・経営力再構築 伴走支援ガイドライン 中小機構
・Ē.H.シャイン著、稲葉元吉・尾川丈一訳/プロセス・コンサルテーション -援助関係を築くこと-/白桃書房