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中小企業にできるカーボンニュートラル対応とは?投稿日 | 2023.5.30

 

先日、製造業を営む中小企業にコンサル終了の挨拶に伺った際、K社長からカーボンニュートラル対応についての話題を投げかけられました。

それは取引先や発注元からその取り組みを聞かれたり、求められることが増えてきたためです。

そこで対応を検討するにあたり「そもそもカーボンニュートラルとは何か?」についてK社長に調査してみたらどうかと提案してみました。

 

カーボンニュートラルを知るには、2020年10月の総理の所信表明演説に遡ります。

そこでは「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」と言ってます。

どうやらこれを機に我が国も本格的なカーボンニュートラル合戦が始まったようです。

 

ここで正しく理解すべき点として、総理が言っているのは「温室効果ガス排出」であり「CO2」とは言っていない点です。

つまり日本が目指す「カーボンニュートラル」とは、CO2だけに限らず、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含む「温室効果ガス」を対象にするわけです。

実際は温室効果ガスの約9割がCO2ですけどね。

 

次に着目すべき総理ワードとして、温室効果ガスの排出を「全体としてゼロにする」と言っている点です。

「全体としてゼロに」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことを意味します。

つまり、排出をゼロに抑えることは現実的に難しいため、排出した分について同じ量を「吸収または除去」することで、差し引き正味ゼロ(ネットゼロ)を目指しましょう、ということです。

これが、「カーボンニュートラル」の「ニュートラル(中立)」が意味するところなんです。

 

ここでK社長からの疑問です。

「企業努力で排出量を減らすのは何となく理解できるけど、吸収・除去なんて我々が出来るわけないだろ!どうしろという事?」

 

まあ焦らずもう少し読み解いていきましょう。

排出量をゼロにできない場合、排出分を埋め合わせるための「吸収や除去」として、たとえば、植林を進めることにより、光合成に使われる大気中のCO2の吸収量を増やすことが考えられます。

あるいは、排出されたCO2を回収して地下に貯留・圧入する「CCS技術」、大気中に存在する二酸化炭素を回収して貯留する「ネガティブエミッション技術」などを活用することも考えられます。

 

「まてー!そんな事が零細企業の我々に出来る訳ないでしょう!」ちょっと呆れ気味のK社長の発言。

 

K社長のお怒りはごもっともですね。

できる訳ありません。

では中小企業としてできることは何でしょう?

どんな考え方や方向性で取り組めば良いのでしょうか?

誰か教えてほしいものです。

すると経済産業省と環境省が何やら考えているようです。

ちょっと見てみましょう。

 

どうやら国はデメリットばかり考えずに、「カーボンニュートラルの波に乗り企業価値を高めなさい」と言いたいようです。

その代わり国がいろいろ応援するという考え方のようです。

国が言うメリットとなる企業価値アップとは以下の五つ。

 

①「エネルギーコストの削減」設備投資や生産プロセス等の改善などによりエネルギー使用量が削減されるため、光熱費や燃料費を抑えることができます。

 

②「競争力の強化・取引先やと売上拡大」サプライヤーに対して排出削減を求める企業も増加しているため、そうした企業に対する自社や自社製品の訴求力向上につながります。

既存の取引先と強固な関係性を構築できるだけでなく、新規取引先の獲得につながる可能性もあります。

 

③「知名度や認知度の向上」省エネや脱炭素に取り組んで排出削減を達成した企業は、メディアや行政機関等から先進的事例として紹介されたり、表彰対象となったりすることを通じて、自社の知名度・認知度の向上につながる場合もあります。

 

④「資金調達において有利に働く」投資や融資の際に、気候変動対応をどのように行っているかが重要視されるようになっており、金融機関において脱炭素経営を進める企業を優遇するような取組も行われています。

 

⑤「社員のモチベーションや人材獲得力の強化」気候変動という社会課題に取り組む姿勢を示すことで、社員の信頼や共感を獲得し、社員のモチベーション向上につながります。

また、気候変動問題への関心が高い人材からの共感・評価も得られ、人材獲得力の強化にもつながります。

 

またそこには、企業の取り組み順番が3段階で示されています。

ステップ1.  カーボンニュートラルとは何かを知る。

ステップ2.  CO2排出量を把握する。

ステップ3.  排出量を削減する。

当然それに向けた支援策も【専門家サポート】【補助金】【税制・融資】と数多くのメニューが用意されています。

 

つまりこの流れはもう止めようがなく、会社レベル合わせ、うまく乗っかって会社のチカラを高める考えが有効そうですね。

K社長としても「仕方ない。この流れに乗っかって会社をワンランク上げて存続させるよ。今度は支援策の賢い使い方を教えてね。」という事で、またしばらくK社長とのお付き合いが続くことになりそうです。

誰かカーボンニュートラル支援が得意な専門家いませんか!

 

中小企業診断士 長谷川雅彦(筆者のプロフィールはコチラ)

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