私たち中小企業診断士は常に「企業の支援」「経営者をささえる」「ビジネスモデルの診断」など言い方は異なりますが、何かしら毎日を中小企業のためになる活動に時間を費やしています。
その日常活動が経営者の道しるべとなる訳です。
しかし助言される経営者側からするとどうでしょう。
めったに経験できない中小企業診断士からの助言は重く、時に会社の未来を左右する重大決断に発展します。
会社規模や業種、経営環境、財務状況の異なる経営者へのアドバイス内容は、おのずと違ってきます。
これは実際にあった場面です。
4月のある日、製造業の若手経営者と私、別の診断士合計3名がカフェでの雑談中に、その会社の未来戦略が話題となりました。
会社の強みや想定顧客のニーズを聞きながらの和やかな意見交換です。
すると同じ情報を共有しているにも関わらず二人の診断士は全く違う方針を打ち立てます。
どちらかが正解で他方が間違いなのでしょうか?
経営の回答を導くには変数が多すぎる超難関連立方程式を解くような活動です。
将棋の達人でもスーパーコンピュータでも先は読めません。これが現実です。
では私たち中小企業診断士の助言には、どのような価値があるのでしょうか。
その前に、そもそも中小企業診断士の本来の仕事とは何なのでしょうか?
それを知るには昭和23年に遡ります。中小企業庁が設置され中小企業の経営・技術の遅れを克服するため、つまり戦後の日本を立て直すため経営に関する専門家として「中小企業診断士制度」が発足しました。
ただし昭和37年までの15年間は、「無試験」で公務員の方が「中小企業診断員」との肩書で業務にあたっていたそうです。そもそもの成り立ちは主に公務員内の資格だったということです。びっくりです。
そして昭和38年に中小企業診断士の法的位置づけが出来、なんと平成11年までの間ミッションは「診断」でした。
実はここがポイントになります。
その後、平成12年に大きな転換期が訪れます。
ここではじめてミッションに「支援」が追加されました。
つまりそれまでは「診断」だけで、この頃ようやく「支援」できるようになったということです。
また幅広く民間コンサルタントを対象とし、診断(現状分析)に加え、助言(企業の成長戦略アドバイス)を重視せよとなりました。なるほどね。
ということは我々診断士の正しいミッションとしては「現状分析し成長戦略をアドバイスをする専門家」という位置づけとなります。非常に難しいミッションですね。
中小企業診断士のミッションが解ったところで先ほどのカフェに戻ります。
二人の診断士による別々の「成長戦略アドバイス案?」を聞いた若手経営者は頭を抱えます。
「うーん。どちらが良いのか悩みますね。」
ではこの辺りで正解を解説しましょう。あくまでも私の考える正解です。
どの診断士でもその企業を分析し自分なりの成長戦略をアドバイスする事ができます。
大切なことはそれを聞いた経営者が「どう思うか。」です。
今回の若手経営者も一生懸命に悩みながら自社の将来を考える事ができました。このプロセスが重要であり価値ある体験です。
経営判断はルール化やマニュアル化ができるほど単純ではありません。
経営者が本気で考え、調べ、学び、実践しながら自分の目指す道に向かいます。
中小企業診断士はその活動を外部の目で確認して分析して助言する役割を担います。
その活動そのものが我々の大きな価値だと信じています。
その前に私たち診断士自身も自分の成長戦略を描く必要に迫られそうですね。