中小企業の倒産件数が増加傾向にあるようです。
コロナ対策融資として活用されてきた通称「ゼロゼロ融資」の返済据置期間が終わり、返済が始まることが資金繰りを圧迫していることが要因の一つと言われています。
たしかに、コロナ禍時代の先行き不透明な時期に、当面の資金繰りをゼロゼロ融資でしのぐことは短期的には有効な手立てであったと言えるでしょう。
求められるのは、その次の根本的な経営改善策です。
佐原は、平成14年のリレバンが始まった頃から、経営改善と事業再生に関わってきました。
平成21年3月までは信用金庫の経営支援部として、平成21年4月からは独立コンサルとして。
途中で関与案件の増減はあるものの、20年以上経営改善の仕事をしてきたわけです。
その仕事の内容を振り返ってみると、時期とともに内容の変化が思い起こされます。
平成14年から平成22年くらいまでは、金融機関やコンサルよりも中小企業の社長達のほうが威勢も元気も良く、私たち支援者の要望や計画策定に関する提案をなかなか受け入れてくれなかったように感じます。
経営者の一部には「放漫経営」が見られ、ムダな経費を使い過ぎたり、経営とは関係の薄い個人的な資産(土地、ボート、リゾート会員権など)を経営体力以上に買い過ぎていたり、ということが散見されました。
こうした経営の問題点は、一目瞭然であり、経営者にそれとなく気づいてもらったり、言って気づかなければ厳しい口調で諫めたりして、スリム体質に改善を図ってもらうようなことができていたように感じます。
しかし、平成22年以降は、経営改善計画をもとにリスケがしやすくなると、金融機関やコンサルなどの支援者から経営者に対して、経営改善に向けた働きかけがしやすくなってきたと同時に、経営者側にもそうした意識や行動が根付いてきました。
時代もリーマンショック以降の不景気であったことや、事業承継による若い経営者への代替わりもあったかと思います。
すると、以前のような放漫経営や経費の使い過ぎといったことは減り、身の丈に合った経営に多くの中小企業が変わってきました。
そして、アフターコロナ、インフレと円安傾向の現在です。
経営改善が必要な中小企業を見ていると、経費削減や資産圧縮といった、短期的に実行可能な「小手先の経営改善策」を行う余地がとても少なくなっているのです。
となると、どのように経営改善を図るか?
もうこれは、根本的な事業の転換、つまり新製品開発や新事業開発、新販路展開などに取り組むほかないようにも感じます。
これらを行うには、相応の知恵と時間とコストが必要です。
そうした「余力」があることが前提です。
これを行うきっかけになり得たのが、事業再構築補助金でしたが、どうやら国が期待していたような業種転換や事業転換などを果たせた企業は極めて少ないのではないでしょうか。
そろそろ本腰を入れて、会社の命運をかけて、事業転換に取り組む必要があるタイミングかもしれません。