「海援隊」
坂本竜馬が興した亀山社中が運営母体となり、世界へ通用する海運業を目指した集団である「海援隊」は、多くのファンが知るところであります。
海が世界へ通じるのは、現在では誰もが知ることではありますが、幕末当時その感覚を持った人物は多くはなかったと思われます。
多くの日本人は、河川の小舟、艀や北前船に代表されるモノの海運が主であり、つまり、日本近海(領海内)での海運業に従事していました。
現在でも、海に囲まれたわが国では馴染の深い事業でありますが、諸手続きや規制する諸手続きには一定の距離感を持たざるを得ません。
しかし、人を対象とした海運業として、今年の4月に起きた知床観光遊覧船沈没事故が記憶に新しいところでありますから、こうした事故や事件が起き社会問題として取り上げられますと意識が高まります。
「遊覧船」
遊覧船を使用し事業を行う場合、海上運送法(海運法)に基づき営業許可を取得しなければならない可能性があります。
屋形船、クルーズ船、運河巡り、お花見や花火見物など船も同様です。
名古屋市内を流れる中川運河でも数年前からクルーズ船が就航しています。
これらの事業が海運法の規制の対象となるわけです。
以前、当事務所へご相談を受けた案件では、愛知県内の海や河川から、花火見物するため人を乗せた船で事業を行いたいというご依頼を受けました。
海運法によりますと、海上運送事業とは「船舶運航事業」「船舶貸渡業」「海運仲立業」「海運代理店業」を指します(海運法第2条第1項)。
これらの内、今回のテーマは「船舶運航事業」に含まれ、旅客に絞りますと、「旅客定期航路事業(一般又は特定)」、「不定期航路事業」の何れかに該当するかを検討しなければなりません。
「旅客定期航路事業」とは,一定の航路に船舶を就航させて一定の日程表に従って運送する旨を公示し行う事業のことを言います。「不定期航路事業」とは,定期航路事業以外の船舶運航事業を言います。
「定員と年間運航日数がポイント」
海運法では、旅客船とは13人以上の旅客定員を有する船舶をその定義としています。
従って、定期、不定期問わず旅客を行う場合、「許可」の対象となります。逆に、12人以下の場合、「届出」の対象となりますので、簡易な手続きで営業が可能ということになるのです。
この場合、人の運送をする事業ではあるのですが、「内航不定期航路事業」にカテゴライズされます。また13人以上だとしても、年間(暦年)3日間以内に限り、かつ、一定の航路に就航しないものであれば、同事業にカテゴライズされます。
定員や船の規模にもよりますが、当職が保有する一級小型船舶操縦士免許で旅客船を操船できる事業は少なくありません。
先述の事故を起こした船長も当職と同クラスの免許を保有しており、数時間の講習を受講するだけで、あのような旅客船を操船できるわけですから、正直驚きました。
今後、免許制度も含め海上運送事業の改正に目が離せなくなりました。