①システム導入を失敗する原因
ITシステムは一昔前に比べれば大変安くなりました。中には無料のものありますが、本格的な業務システムはまだまだ高い買い物です。せっかく大枚はたいてITシステムを導入したのに期待通りの成果が出ないという話は珍しいものではありません。その原因は大きく4つあると考えられます。①IT導入の目的が曖昧で、もうかるストーリーが描けていない。②システム機能が業務に合っていない。③システムユーザがPC操作できない。あるいは旧来の手作業にこだわる。④業務のルール、基準が曖昧。以上の4つと言われています。①については、手作業を機械化する目的ならばITに仕事をやらせればいいのですが、売上を上げる、仕事の質を上げる、新規顧客を開拓するなどの目的の場合、ITシステムと売上や利益の効果は直接的なものではなく、風が吹けば桶屋が儲かる的なものが多いので、ストーリーをしっかり描き、ITシステム以外のリアルのしかけが重要です。②はシステム要件の検討不十分です。③の原因はさすがに最近は少なくなりました。
②個人の能力と組織の成熟度
④の原因が「組織の成熟度」に関するものです。組織内のメンバーがいくら業務能力の高くても、バラバラの自分勝手のやり方で仕事をしていてはITシステムは上手く働きません。一般的に組織の人数が増えれば業務内容は細分化され、分担して仕事を進めていかなくてはなりません。そのため、組織内のメンバー間で情報が適切に伝わり、仕事がスムーズに進むようにルール、基準を決めておかなくてはなりません。そういうと、うちはちゃんと業務のルールや基準があるので問題ないと思われるかもしれません。組織メンバーの経験が豊富、言い換えれば仕事ができる人たちばかりの組織では、ルールや基準がきちんと決まってなくても業務はきちんと回っていきます。しかし、初心者のアルバイトに仕事をさせようとすると細かい基準やルールを決めておかないと業務の質を一定に保つことはできないことはご理解いただけると思います。
③ITシステムを導入する前にやっておくこと
ITすなわちコンピュータは繰り返しの仕事をこなすことは人間より遥かに有能です。しかし、判断、分類、要約などの仕事は初心者アルバイトレベル、それ以下です。最近のAI技術であっても、それはAIに学習をさせた後のことであって、学習前のAIは全く無知の赤ん坊と同じです。具体的には、例えば経理業務は会計基準という国家的なルールがありますので比較的どんな組織でもシステム化は容易です。しかし、各営業担当者の見積内容を揃えたいという目的の場合は、仕入れ品目の仕入先、品目、単価を一定にしておかなくてはなりません。また、作業工数も仕事の内容に合わせて標準的工数を定める必要があります。このようにリアルの業務の標準化をまずやっておかないとITシステムはうまく動きません。ITシステム化によりDX経営を目指そうと思ったら、まず、導入するITシステムのレベルに足らない組織の成熟度レベルを上げる活動を同時に行わなければ高い買い物を無駄にしてしまうことになるといことを忘れないでいただきたいと思います。