私の実体験ですが、多くの社長を相手に経営相談を20年以上続けていても、その企業の真の経営課題を見つけることが難しいと感じます。
なぜなら社長自身がその課題に気づいていない場合が多いためです。
では「経営課題」とはなんでしょうか?
「経営課題とは、企業が成長や発展を遂げるために解決すべき内容のことです。
企業の現状と目指すべき姿とのギャップを埋めるために対処すべき事項」との事です。
経営課題の例として、売上(収益性向上、売上の低迷、市場シェアの減少、価格転嫁)、人材(人材不足、人材育成、働きがい、従業員満足度)、競争(競争力の不足、競合他社の台頭)、資金(資金不足、資金調達)、生産性(生産性の低下、組織の効率化、機械化、システム導入)、品質(製品・サービスの品質管理、不良率)、その他(納期、物価高騰、後継者不在)と挙げればきりがありません。
そこでコンサルタントから「御社の経営課題は何ですか!」と尋ねられても、「?」となるのが中小企業のほとんどの社長さんです。
そこで経営課題を見つける訳ですが、その前に「何のために見つけるのか?」というシンプル克つ重要な整理をしておきましょう。
企業は社会活動に必要な価値提供者として、存続することに意味があります。
そのために売上・利益を確保する必要があり、その障壁となる経営課題に取り組まざるを得ないということです。
経営課題となるアイデアを出す時には、課題を「選択」し「集中」的に取り組む必要があります。
多くの企業は経営課題をひたすら全て並べて解決しようとします。
改善の余地があるというだけで取り上げるならば、いくらでも出てきます。
それらを一気に解決し完璧な状態にすることなど、限られた経営資源が分散してしまい、非効率で非現実的です。
では経営課題を見つけるための代表的なフレームワークを見てみましょう。
これらのフレームワークは経営課題の分析や解決策の策定に役立つことがあります。
組織の内外の要素を分析し、強み・弱み・機会・脅威を明確化する分析ツール。
戦略策定や意思決定に活用され、組織の戦略的な方向性を把握するために重要です。
ここで出た強みを強化するのか、弱みを克服するのかで経営課題の方向性が決まります。
競争力を高めるための基本戦略を提案するフレームワーク。
コストリーダーシップ、差別化、コスト集中、差別化集中の4つの戦略を選択し、競争優位を獲得する手法です。
中小企業ではコスト低減による低価格戦略は難しく、差別化を目指す訳ですが差別化できる強い技術があるかどうかにもよります。
ビジネスモデルを視覚化するツールで、事業の要素を9つのブロックに分類して表現します。
事業モデルの設計や変革に活用され、ビジネスの理解と改善に役立ちます。
◆顧客セグメント(価値を創造し届けたい人は誰か)
◆バリュープロポジション(価値提案)顧客にどんな価値を届けているのか、顧客の抱えるどのような問題を解決しているか。
◆キーリソース・・・価値を顧客に提供し続けるために必ず必要とされるリソースを書き出します。ビジネスのステークホルダーとなるすべての要素が含まれます。担当者やノウハウ。
◆キーアクティビティ・・・・価値提供のために組織が実行しなければならない重要なアクションを書き出します。
商品開発、マーケティング(新規ユーザー、既存ユーザー)
◆主なパートナー・・・・・事業の外部リソースと活動を担うサプライヤーは誰か。運送業者、食材販売業者、梱包材の販売業者など
◆ 顧客との関係・・・・顧客が確立・維持することを期待している関係性は何か。
◆チャネル・・・・顧客に事業の価値を届けるために必要なチャネル。顧客はどうやって 自社のサービスにリーチし、サービス利用後にどのようなチャネルでユーザーとつながるか?決済は簡易か?顧客対応はスピーディーか?
◆ コスト構造・・・・ビジネスモデルの運用で発生するすべてのコストは何か。インフラコスト、マーケティングコスト、運用コスト、人件費、経費。
◆ 収益の流れ・・・・顧客に提供する価値が受け入れられた結果生まれるもの。収益ポイントを書き出し、流れがわかるように書くのがポイント。
問題解決や業務改善のための反復的なプロセスを示す手法。
計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)の4つのステップを順次実施し、持続的な改善を図ります。
PDCAどのあたりで躓くのか。なぜ実施できないのかがポイント。
製品やサービスの付加価値を理解し、競争上の優位性を創出するための分析手法。
供給者から顧客への価値創造プロセスを可視化し、業界内の位置づけを把握するのに役立ちます。
どこに問題があり、どこを強化すべきか?自社のバリューチェーンに注目することで、事業活動において「どこに」「どのような」付加価値が発生しているかをつかむことが可能です。
製品・価格・販促・流通の4つの要素から成るマーケティング戦略の構築手法。
各要素を適切に調整し、顧客ニーズに応えるマーケティング活動を展開します。
このように様々なフレームワークを用いて自社にとってまたはご自分にとって一番しっくりくる方法で自社を分析すると、課題が自然と浮かび上がってきます。
でも実際にはここからが大変です。
課題が見つかったとして、優先順位をつけて解決の方法を見つけ出します。解決の方法が決まったら誰が、いつまでに、いくらのコストを払って、どうやって解決するのか?へと続きます。
はぁ~。安定的に経営したいだけなのに、もっと簡単な道はないのでしょうか?