「国際貢献、外国人技能実習制度」
我が国では「国際貢献」という錦の御旗の下、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号)」であり平成28年11月28日公布、平成29年11月1日に施行、新しい技能実習制度が実施され現在に至っています。
先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することがその旗印です。
出入国在留管理庁によれば、技能実習生の数は35万8159人(令和5年6月末日現在)。
ピークは令和元年としコロナ禍で一旦はその数が減少しましたが、依然右肩上がりで推移しています。
日本の労働者人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は、令和4年6902万人なので同年10月時点の技能実習生(343,254人)との割合は0.49%程度ということになります。
外国人労働者全体数(1,822,725人)との割合は2.6%となります。
因みに、主な産業別就業者数の内最も少数派の「複合サービス事業」は50万人、最も多数派の産業は、「製造業」と「卸売業・小売業」の共に1044万人であります。
「この国は、働きやすいのか」
外国人技能実習制度がニュースで取り上げられる内容の多くに、「失踪」に関することがあげられます。
出入国在留管理庁によりますと、令和4年に失踪した技能実習生の数は9,006人にのぼります。
失踪者数は、在留資格「技能実習」をもって本邦在留中、監理団体等から外国人技能実習機構に対し、「行方不明」となった旨の技能実習実施困難時届出書が提出された者を集計したものであるため、実数はもっと多いかもしれません。
国別でみてみますと、失踪者数が一番多い国はベトナム(6,016人)、以下中国(922人)、カンボジア(829人)と続きます。
技能実習法が施行されました令和元年の9,052人が最も多く、令和4年の失踪者数は過去10年間で二番目に多い年となっています。
「選ばれし国、日本へ」
先日(10/18)、外国人労働者のあり方を議論する国の有識者会議で、技能実習に代わる新制度の素案が提示されました。特筆すべきは、転職が可能となることがあげられるでしょう。
今までは「1.やむを得ない場合」のみに限定されていた転籍の範囲を拡大・明確化し、手続を柔軟化するとしています。
また、これに加えて、以下を条件に「2.本人の意向による転籍」も認められそうです。
1)人材育成等の観点から、一定要件(同一企業での就労が1年超/技能検定基礎級合格、日本語能力A1相当以上のレベル(日本語能力試験N5合格など))を設け、同一分野内に限る。
2)転籍前企業の初期費用負担につき、不平等が生じないための措置を講じる。
3)監団体・ハローワーク・技能実習機構等による転籍支援を実施。
4)育成終了前に帰国した者につき、新制度による再度の入国を認める。
①それまでの新制度による滞在が2年までの者に限る。
②前回育成時と異なる分野を選択可能。
これらから考察しますと、新制度は、従来の技能実習制度の目的である人材育成から、人材確保へと大きく転舵されるというべきでしょう。国も本年6月に、技能実習制度を「発展的に解消」し、代替制度を新たに創設すると決定しています。
11月中に最終報告をまとめるとしていますので、大いに注目に値しますね。
しかし、どうしても新制度ばかりに目が行ってしまいますが、大切なのは日本で働くことに魅力がなければならないということではないでしょうか。
この点は、国のみならず、企業や地域社会を巻き込んで、魅力度を向上するしかないと思われますが、いかがでしょうか。
参考HP:
「技能実習生の失踪者数の推移(平成25年から令和4年)」出入国在留管理庁
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第12回)」出入国在留管理庁