建物や機械の相見積りの依頼をするときには仕様書を業者に提出しますよね。
ではITシステムの仕様書とはどんなものでしょうか。中小企業がITシステムを発注する場合、仕様書を作成して相見積もりをとることは少ないというのが現状ではないでしょうか。
ITシステムを事前に仕様を明確にして相見積もりで導入業者を選定できなかったため、納品されたITシステムが期待した機能ではなく、効果のないものだったり、作り直しにより当初計画を大幅にオーバーするものになったりと苦い経験をされた企業の話をよく耳にします。
今回はそうならないためにITシステムの仕様書(RFP,提案依頼書)について解説したいと思います。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)を進める上て必要不可欠なものはITシステム(ハードウエアとソフト)です。以前このコラムでアプリの自社開発をお勧めしましたがすべて自社開発で必要なシステムが賄える中小企業は、ソフトウエアハウス以外ではほとんどないと思います。
なにかしらソフトウエアハウスやシステムベンダーに依頼して導入することがあるはずです。
ITシステムは決して安いものではなりません。
十分な準備をして慎重に製品や取引先を選定しなければならない投資案件です。
建物や機械設備に投資する場合は、複数業者に相見積もりをとり、比較検討した上て製品や業者を決定するはずです。
ところが、私がご相談やご支援する中小企業では、ITシステムを導入する際に相見積もりを取って決定した方はほとんどないというのが実情です。
なぜでしょうか。見積を依頼する場合は投資対象の仕様が明確でなければなりません。
建物でも機械設備でも、どんな大きさ、広さ、用途、性能などがはっきりしていなくてはなりません。
構想図面なども準備することもあります。
しかし、ITシステムのソフトウエアの仕様書は作成することが難しいためなかなか書けないという現実があります。
ITシステムの仕様書(RFP提案依頼書)の構成は個々には多少の違いはありますが、大まかには、
(1)自社、および業務の説明、
(2)経営課題と改革目標、
(3)目指す業務の姿、
(4)現状システムとその課題、
(5)新システムの機能要件、
(6)システム実装の進め方、
(7)納期その他の要望、などです。
がなぜ、ITシステムソフトウエアの仕様書を作成することが難しいのでしょうか。
「(1)自社、および業務の説明」は説明の必要はないと思いますので、(2)~(6)についてこれから解説したいと思います。
建物や機械設備は目に見えるものですが、ソフトウエアはアウトプットの画面や帳票以外は見えないものです。
その画面や帳票もどのようなものにすればいいのかということが事前にはっきりしていないのです。
なぜはっきりしていないのか、それは新しくITシステムを導入してどのような仕事のやり方にするのかがはっきりしていないからなのです。
経理業務のように企業によってその目的や、方法があまり変わらない業務があります。
このように企業よりあまり変わらない業務であれば、標準的なパッケージソフトを導入すればそれを使って業務を行い、期待する効果を上げられるでしょう。
しかし、生産管理とか顧客サービスなどその会社の独自の考え方、やり方がある業務があります。
これには標準的なパッケージを導入することが効果のある場合とそうでない場合があるのです。
これについては後で解説します。
生産とかサービスなどはその会社の基幹プロセスであり付加価値を生み出す仕事です。
その業務プロセスにITシステムを導入して新たな付加価値を生み出すことがDXと言えるものです。
付加価値と言ってもその中身は様々です。
仕入価格の低減、作業工数の低減、売上単価の向上、時間あたりの生産高の向上、品質向上による歩留まりの向上などなど、様々です。これらのどれを改革しようとするのか。
これは企業戦略そのものです。
このような経営課題と取り組むテーマが明確になっていないと事業の主要業務(価値創造プロセス)のITシステムの仕様は決まりません。
まず、経営課題とその取り組みテーマを考えることにまず取り組む必要があります。
取り組みテーマはITを活用するものだけとは限りません。
そのテーマにITが有効になるものがあるなら、それがDXとなるわけです。
デジタル(D)は手段であり、トラスフォーメーション改革(X)が先にあると言われる所以です。
この取組は本コラムの2022.10.20投稿の「DXの伴走支援って具体的に何するの?」に記載の「1.意思決定:経営ビジョン・戦略策定」にあたります。参考にしてください。
これで、前述のITシステムの仕様書(RFP提案依頼書)の(2)経営課題と改革目標の内容が書けることになります。
次回は「(3)目指す業務の姿」について解説したいと思います。