中小企業支援には一般的なスキームが存在します。
個々のコンサルタントに違いがあるものの概要としては、
傾聴ヒアリングによる①「現状把握」、
会社の目標となる②「あるべき姿」を探り、
③「現状とのギャップ」を見定め、
それを埋めるため④「問題点」「課題点」を抽出し、
解決するための⑤「作戦」を立て、
優先順位をつけて⑥「計画」を作り、
⑦「PDCA」を回す。
この基本スタイルをアレンジして様々な支援プログラムやフォーマットが開発されています。
またこの活動を長期間寄り添いながら丁寧に指導する手法のことを「ハンズオン支援」とか「伴走支援」などと言います。
どうでしょうか?この手法はコンサル活動の一連の流れとして多くの支援機関でも活用されていますし、私も基本的にこのスタイルで仕事をしています。
しかし1つの疑念が浮かびました。
それは「経営者の思い描くあるべき姿がそれでいいのか?」という疑念です。
そもそも会社の目標とする「あるべき姿」とは一体何でしょう?
考えられるイメージとしては、会社の方針や目標、または経営者のやりたい事、願いごと、夢、やらなければならない事、無理とわかっていてもやると言わざるを得ないこと・・・・・など。
その経営者のその現時点での想いです。
その想いが経営者として様々な検証や調査の上に創られた近未来の「姿」であればよいのですが、私の経験では「深く考えたことない」「急に考えることができない」経営者は少なくありません。
しかしコンサルタントに聞かれると、その場で何かしらの「回答」をしてしまいます。
それを「経営者の想い」としてコンサルタントが何も疑問に思わなかったらどうなるでしょうか?
難しい目標または成功確率の低い目標に向けコンサルが本気で後押しすることになります。
当然時間もコストも相当費やすことでしょう。
そしてなかなか成果が出ない時にコンサルとして「もっと投資しますか?」「経営者が決めた方針ですよね・・・・」となります。
そうなると悲劇です。これに似たケースを回りで時々見かけます。
では、コンサルタントが「社長の考えはあまいです!」と言えるかという問題が起こります。
この問題を解決するには、最良の選択肢を社長が選びやすいように思考を深くしていただくしかありません。
つまり社長が心から納得できる最良の道を社長自身が選ぶようコーチングする必要があります。
そこで実際にテストしてみました。
社長の目指す将来像を聞き出し、なぜそう考えるのか「思考のプロセス」に切り込んでいくつか質問を重ねると、わずか数分で方針が変わるケースが少なからず起きました。
たぶん社長の潜在意識や本心がその質問を待っていたのでしょう。
しかしこのような現象が起きる時と起きない時があります。
ではどんな状況であれば潜在意識にたどり着くのでしょうか。
明快な結論は出ていませんが一つ言えるのは「信頼関係の瞬間」です。
お互いが相手を信頼できた時にこうした場面がふっと訪れます。
心理学でいうところの「ラポール」という状況です。
場面的には社長との1対1の時、打合せの休憩時間など。
よくタバコ場で本音トークが聞けると言われるのがその現象です。
そうなると本心からの「想い」が少しずつ現れます。
そこから会社方針につながる「あるべき姿」につなぐにはさらにもう一つの仕掛けが必要です。
それはシミュレーションとビジュアルイメージという仕掛けです。
このように「真の想い」から時間をかけて論理的思考や調査・分析・シミュレーションを通して会社の将来を一緒に考え、その将来の姿を数字、絵、図表で「見える化」することでイメージが固まります。
このようなプロセスを経てからの「あるべき姿」を定義することが中小企業支援のスタートと言えます。いかがでしょうか?
ではこのコラムを読んでいただいている「あなた」にも質問です。
自分の仕事について未来のあるべき姿について訊かれた時に答えられますか?自分のことはむずかしいでしょ?