最近よく耳にすることが多くなった「従業員エンゲージメント」という言葉。「会社(ブランド)に貢献したい」という従業員の自発的な意欲のことを指し、「愛社精神」や「愛着心」とも訳されますが、「従業員満足度」と似たようなイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。
今回のコラムは、「組織(企業)」と「従業員」の関係性を示す「従業員エンゲージメント」に焦点をあて、考え方や効果を解説するとともに、向上させるために必要な取り組みについてご紹介します。
【従業員満足度との違い】
「従業員エンゲージメント」は従業員の心理状態や会社との関わり方を示す考え方のため、「従業員満足度」と混同されることがあります。
それぞれ、従業員の組織に対する意欲を測る考え方ですが、会社との結びつきの方向性に大きな違いがあります。
「従業員満足度」は、会社が従業員にとって居心地のいい空間であるか、上司や会社に不満がないかを示した指標です。
対して「従業員エンゲージメント」は、従業員が会社に貢献したいと思う意欲を指し、会社と従業員が同じ方向を向いているイメージです。
従業員一人ひとりが会社のビジョンやパーパス(目的・意図)に共感し、会社(ブランド)の方向性に納得して共に進むことを示した新たな指標です。
【ホワイト企業の意外な落とし穴】
近頃、手厚い福利厚生やコンプライアンスを遵守した、いわゆる「従業員満足度」の高い「ホワイト企業」のデメリットが取り立たされています。
例えば、若い頃は長時間労働でもなんでもバリバリやって早く実力をつけたいと考える社員にとってホワイト企業は労働時間を制限され、いくら追加で仕事がしたくても任せてもらうことは難しい職場環境になってしまっています。
また、社内の人達もどちらかというと緩く働きたい人が多く、自分の存在だけ浮いてしまうということにもなりかねません。労働環境が良い「ホワイト企業」だからこそ、自分が理想とする働き方と職場環境にギャップが生じ、高い意識や能力を持つ従業員から離職するという現状が目立つようになりました。
【従業員エンゲージメントが重要視される背景】
働き方の多様化も企業が「従業員エンゲージメント」が重視され始めた大きな要因になっています。
終身雇用制度が崩壊したことで転職や再就職が当たり前となった昨今、企業はいかに優秀な人材を流出させずに留めておけるかが求められています。
ホワイト企業からの離職者が増えているように、「従業員満足度」の向上だけでは問題解決に至りません。
[この会社で働くための意味や理念に共感]し、経営層はもちろん全社員が会社(ブランド)に対して強い愛着や誇りを持ち、
自ら進んで行動する「従業員エンゲージメント」の向上・改善がこれからの新たな指針になると考える企業が増えています。
【従業員エンゲージメントを高める3つの要素】
従業員エンゲージメントをアップさせることは、会社(ブランド)にとってもプラスの作用が多く働きます。
「従業員エンゲージメント」の向上には「理解度」「共感度」「行動意欲」の3つの要素が必要であるとされています。
①理解度の向上
従業員が企業(ブランド)の進む方向性を具体的に理解し、自ら進んで支持できる状態であることを指しています。
つまりは、企業のビジョンや成長戦略で語られる方向性と従業員の方向性が一致している状態です。
②共感度の向上
従業員が属している組織やともに働く仲間に対して、帰属意識や誇り、愛着の気持ちを持っている状態を示しています。
共感度が高いことで組織にコミットする意欲が生まれます。
③行動意欲の向上
組織の成功のために、求められる以上のことを進んでやろうとする意欲がある状態を示しています。
高い行動意欲を持続させるには、成果に対する周りからの適切な評価や、社会に貢献できているといったやりがいが必要です。
コロナ禍を経て社内でのコミュニケーションが疎遠になっている事もあり、
「会社(ブランド)の方向性が見えない」「会社と価値観を共有できない」といった課題が浮き彫りになってきました。
会社(ブランド)が目指すビジョンやパーパスを深く浸透させ、目標実現のために[自ら考え・自ら動く]エンゲージメントの高い社員の育成が、
企業にとって今後の大きな課題となるでしょう。