自社の従業員や現場作業者は、自分達の提供価値をしっかり理解されていますか?
顧客がどのような評価を自社、自社商品・サービスに対して行っているか、自覚していますか?
今回は、会社のメンバーの提供価値の本当の理解、そしてその効果についてお話します。
先日、ある顧客において、現場作業者を中心とした会社の「強み・弱み理解」グループワークを実施しました。企業概要は以下の通りです。
年商:5億円弱
事業内容:大手自動車部品メーカー向けにオーダーメイドの機械装置を製造・販売している製造業
従業員数:約40名
結論から言うと、作業している現場に近づけば近づくほど、顧客のことがわからない、どんな自社の価値が認められて、仕事が成立しているのか、という認識をもっていない、持てない状況になってしまっているということがわかりました。
そして、それが当たり前になってしまっていました。
例えば、強みとして挙がってきたのは「一貫生産体制を持っていること」。
では、一貫生産体制が顧客のどのようなニーズに響いているのか?と聞くと、「よくわからない。」と。
しかし、よくわからないけど「一貫生産しているということは、たぶん自社の強みなんだろう。」という感覚でしかないように見受けられました。
同じように、「顧客の無理くりな納期要求にちゃんと間に合わせています。顧客ニーズに応えています!」も挙がります。
しかしこれは、結果として“できた”ということだけで、なぜそれができたのか?と聞くと、「みんなで頑張ったからできたんです!」という話になってしまいます。
ということで、本当の意味で自社の提供価値を理解するためには、顧客のこと、競合のこと、外部環境のことを知らなければ始まりません。
それでは、なぜ現場の作業者であっても、顧客のことを理解し、自社の提供価値を認識していなければならないのでしょうか?大きく2つ理由があります。
一つ目。
VUCAの時代と言われるようになって久しいですが、それまでは基本的に経営者ないしは、一部の経営層が会社の方向性や課題設定を行い、その他のメンバーはそれに従っていました。
しかし、環境変化が激しく高速化する時代においては、それでは十分ではありません。
実作業から距離のある経営陣だけで、会社の方向性を決めようとすると、課題感が浅く、乏しくなってしまう(=仮に解決したとしてもゴールに近づかないイメージ)ように感じています。
現場を知っているメンバーも参加して考える必要がありますが、顧客のこと、競合のこと、外側のことを把握できていない状況で今後どうしようかと考えても、なかなか答えはでません。
事例企業は、現時点では、利益は出ている、いい顧客からいい仕事もある、だけど、特定の顧客に依存しすぎている、季節要因で受注量が偏る、というような起きている事象=問題点はなんとなく感じているけど、提供価値の理解がないため解決の糸口が全く見つからないように見受けられました。
二つ目。
会社の方向性やあるべき姿、その課題設定もさることながら、そのような会社においては、働いている人自体の課題感も薄く浅くなってしまう傾向があります。
なぜなら、今後どういうキャリアを自分自身が積めば良いか、どういうスキルを身に着ければ良いかということがわからないからです。
顧客のニーズに応えている自社の価値がわからない、今後会社がどのような価値を活かして事業運営をしていくつもりなのかも明確になっていない状況であれば、当たり前です。
事例企業においても、「特段、現時点においては不満は少ない。」だけど、「今後、今以上に頑張る。」というモチベーションは感じられませんでした。
しかし、それはメンバーの自己責任ではなく、モチベーションアップのための端緒を見せていない経営陣に責任があることは言うまでもありません。
そして彼らは、将来に対しての漠然とした不安を持っています。特に若いメンバーは。
会社の中にいて作業だけしているという状態だと、どうしても顧客・競合・外部環境のことが伝わってきません。
外部に接している人からの情報が無い限りは。
そうなると、将来の不安は多少あるけど、普段の業務を最優先で頑張るしかないよね、という状態に落ち着いてしまい、目先の自分の範囲内の業務に没頭してしまうのも致し方ありません。
彼らに、「もっと責任感を持て。」「もっと会社のことも考えろ。」と言う前に、経営者・経営陣・リーダーは顧客がどう感じているか、顧客にどんな価値が認められているのかを伝える必要があるのです。
自社・自分たちの提供価値=いいところを口に出して話ができないようなリーダーは、メンバーにも顧客にも、自社の価値を伝えることはできません。
なぜ競合他社と違って見えるのか? なぜ顧客は選んでくれているのか? を追及して、それがなぜなのか、それをもっと素晴らしくするためにはどうすればいいのかということを考え抜く必要があります。
そのためにも、ぜひ自社商品やサービスに対する顧客の声、自社の製品をどのように使っているのか、実際にメンバーに見せてあげてください。
もっと言うと、顧客の生の声を画像や動画を使って説明してあげてください。
そういう話をすると、「顧客に製造現場を見せてください、何を作っているのか、どう使われているのか教えてください、なんて言えない。顧客に嫌だと言われそう、面倒な許可が必要そう。」と聞く前から尻込みしてしまう会社が多いですが、それは本当の意味での「顧客との信頼関係」ができていないからです。
あるいは、自社と顧客の関係を「顧客と下請企業(自社)」と決めつけてしまっているからです。
本当に「当社は顧客から必要とされている!」と言えるのであれば、まずは顧客に相談することから始めてください。
だって、顧客への提供価値を高めるために必要なプロセスなのですから。