前回の小職のコラム(2023.7.23/DXは自社開発がオススメ)でノーコード/ローコードツール(以下、ノーコードツール)による自社開発をお奨めしました。
今日は、せっかくの自社開発システムを継続的に運用するためにご留意いただきたい点を解説したいと思います。
それを一言でいうと、作ったアプリをブラックボックス化しないようにすることです。
従来からEXCELやACCESSのマクロ機能を使って便利なツールを自作して業務改善された職場は多いと思いますが、ツールを作成した人が、異動や退職でいなくなったら他のだれもそのマクロプログラムをメンテできずにブラックボックス化してしまい、機能改修ができずに使いづらくなったり、使えなくなったりして、場合によってはITベンダーに新規に作成してもらわなくてはならなるような事例をよく耳にします。
改修が必要になるのは、OSのバージョンアップや業務要件の変更などが主な要因と思われますが、前者については最近のノーコードツールはクラウド構成が主流ですのでOSに依存しません。
クラウド構成とはアプリを動作させるプログラムはPC自体の中にはなく、インターネットでつながったノーコードツールベンダーのサーバー内にあるというものです。
従ってPCのOSが変わってもアプリのプログラムに影響を与えることはないのです。
しかし、後者の業務要件の変更が要因でツールの機能を改修しなければならない場合は、ノーコードツールで作成されていても、それがブラックボックス(属人)化していたら、作成した人がいなくなった多くの場合、手を付けられない状況に陥ることが懸念されます。ベンダーもこのような問題点への対策を講じてはいますが、完全ではないと言えます。
アプリ作成者が他の人がメンテすることを考慮しないで作成したアプリを他人が改修しようとすると多大な工数(苦労)を要してしまうのが通常です。
ではどうしたらいいか。
私がおススメするのはアプリの仕様書、いわゆるドキュメントを作成しておくことです。
ドキュメントといってもそんなに専門的なものではありません。それは(1)業務フロー、(2)業務マニュアル、(3)データ関連図です。
(1)業務フロー、(2)業務マニュアルはノーコードによるアプリだからといって特別なものではなく通常のものです。
(3)データ関連図は初めての方もおられると思いますので簡単に解説したいと思います。
データ関連図はER(エンティティ・リレーション)線図とも言われるものです。
ER線図は初めての方はちょっと勉強しないと理解が難しいと思います。
さわりだけ紹介しますと、エンティティというリアルの業務の対象(行為、記録等)を表すデータの項目の関係(リレーション)を図示したものです。
リアルの業務の対象とは、たとえば「注文(書)」、「品目」、「仕入先」、「担当者」などです。
注文書には注文先(仕入先)、日付、担当者などを記載する表題部と品目名や単価、数量、金額などを記載する明細部があります。
これらの情報がアプリで作成され、データとしてシステムに記録されていくわけです。
注文書の表題部、明細、品目、仕入れ先、担当者などがエンティティと言われる情報です。
そしてそのそれぞれの中身にあたる項目、例えば表題部なら仕入先名、仕入れ先住所、当社名、当社住所、担当者名、日付等々が項目と呼ばれる情報です。
このエンティティや項目の対応関係を表したものがER線図です。
このような情報項目の関係をドキュメントとして残しておくことで、アプリ作成者以外の人が、アプリの設計がどうなっているのかを簡単に理解することができ、ブラックボックス化を防止できます。
しかし、通常のノーコードツールはER線図を作成しなくてもアプリが作成できるようになっておりますし、ベンダーも商品のハードルを高くしたくありませんので、ER線図などほとんど説明していません。
使い始めて最初のうちは単純な構成ですのでアプリの中身もわかりやすいですが、どんどん使いこなすに従い、複雑化するのが通常です。
そうなるとER線図(データ関連図)がないとどんどんブラックボックス(属人)化してします。
コードツールの中には作成したアプリのデータ関連図を自動的に表示する機能を持っている商品もありますが、その図を読み解くスキルは必要です。
ノーコードツールアプリのブラックボックス(属人)化を防ぐために、ぜひER(エンティティ・リレーション)図の勉強をすることをおススメします。
※参考書例:真野正著/実践的データモデリング入門 翔泳社