日本人の3分の1は、簡単な文章が読めない。
2018年に行われた国際学習到達度調査(PISA)で、日本の高校生(15歳)の読解力は15位と、前回の調査から大幅に順位を落としました。日本の識字率はほぼ100%であり、ほとんどの人が読み書きできます。
でも、日本語は読めるが、文章の内容を十分に理解できない(そもそも、長い文章を読むだけの能力・体力がない)という人は、社会人でも増えたと実感しています。作家・橘玲氏は、その著書『事実VS本能 目を背けたいファクトにも理由がある』の中で、
【1】日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない(正しく読解できない)。
【2】日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない。
【3】パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。
という驚くべき調査を発表して話題になりました。
この「日本語が読めない日本人」という現実は、私たち広告業界では20年以上前から話題になっていました。
キャッチコピーのない広告が増えた理由。
広告製作の現場では、2000年前後を機に“キャッチコピーのない広告”が増えました。景気が低迷していたこともあり、イメージよりも具体的な言葉(商品名や価格など)を直接的に伝える広告にトレンドが変わったこともありますが、『文章を正しく理解できない人が増えた』ことが一番大きな理由です。短いキャッチコピーですら誤解され、敬遠されるようになったのですから、テキストによる商品説明など読まれないのは当然。
それ以降、広告の文章は、“より短く・より分かりやすく”が制作の基本となりました。
その代案として一時『マンガによる商品紹介』が増えましたが、そのマンガですら『文字(台詞)を読むのが億劫』と言われるレベルにまで読解力が低下している、というのが悲しい現実です。
そして、Webの時代。
広告の中心は、より手軽に情報を得られる動画(Movie)へと急速に移行しているのも、世の中に“文章が読めない人”が増えたというトレンドに応えた結果に思います。
簡潔に伝える重要性と情報格差という弊害。
最近のYouTubeやTi kTokの傾向は、まさに『時短』の極みと言っていいでしょう。
YouTubeでは素材となる動画を分割して公開する、いわゆる『切り抜き動画』が主流になっています。
また、次々と短い動画が流れるTikTokには、近年ビジネス関連の動画が急増しています。
『時間を無駄にしたくない』という視聴者ニーズが強くなる程、ショート動画の需要は高まります。
簡潔に情報を伝えるツールとして、ショート動画ほど適した媒体はないでしょう。
ただし、簡潔に伝えるために削ぎ落とした情報の中にも重要な種(シード)があることを忘れてはいけません。
『誰もが手軽に知った気になれる情報』と『しっかりと読み解いて手にする情報』。
この2つの階層(レイヤー)による情報格差は、今後もますます広がることが予測されます。