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中小企業支援の方向性:「売上高 100億円企業の創出」とは投稿日 | 2025.1.10

中小企業庁の山下隆一長官が、2025年1月1日に年頭所感を公表されました。

簡単に(AIで)要約してみますと以下のような内容です。

 

現状認識:

日本経済は賃上げの加速や国内投資の増加など、デフレからの脱却に向けた「潮目の変化」が見られている。

日本の雇用の7割、付加価値の5割以上を占める中小企業が、この経済転換の主役となる必要がある。

ただし、中小企業は物価高や人手不足など、依然として厳しい経営環境に直面している。

これらの企業の活躍が経済成長に不可欠であり、持続的な賃上げを実現するための支援が必要です。

中小企業庁による3つの重点支援策:

①取引適正化の推進

・公正取引委員会と連携した価格転嫁対策の強化

・価格交渉促進月間の実施と発注企業の状況公表

・下請法の改正と執行強化

②生産性向上支援

・人手不足対策としての省力化投資支援

・カタログ形式やオーダーメイド形式による投資支援の実施

・随時公募による補助金制度の継続

③成長投資支援

・売上高100億円規模の企業育成に向けた支援

・大胆な設備投資への補助金創設

・官民ファンドによるリスクマネー供給

・事業承継・M&A支援の強化

 

これまでは、コロナ禍もあって事業継続を支援する給付や無担保・無利子融資といった「救済型」支援を「満遍なく」行うというもの中心でした。

しかし、この年頭所感からは、持続的な賃上げができる企業を支援する、成長企業を後押しする政策への変化を感じられます。

特にこれまで見たこともない「売上高 100億円企業の創出」という言葉が出てきています。

この話、突然の思い付きではなく、実は2023年~2024年にかけて経済産業省の研究会で議論されており、レポートも公開されています。

今回はこの2つのレポートから読み取れる今後の中小企業支援、特に「売上高 100億円企業創出」の意味を紐解きたいと思います。

(個人的な解釈を含みますので、興味のある方は元データをご確認ください。)

〇2023年6月 中小企業の飛躍的成長に向けた政策の方向性ー「100億企業」への成長に向けて ー

〇2024年6月 中小企業の成長経営の実現に向けた研究会第2次中間報告書

 

1.中小企業政策の新たな方向性

・様々な環境変化が頻繁に高速で起きる中、「満遍なく」「広く浅い」支援では対応に限界がある。

・環境変化に対応できる中堅企業クラスに匹敵する売上高 100 億円規模の「100億企業」を

創出することを目指さなければならない。

・「100億企業」へと成長することを目指し、挑戦・自己変革への意欲を持つ、中小企業の経営者、そして、中小企業の経営と成長に新たに携わりたいと考える人々を支援するべきである。

・「100億企業」には、地域経済を先導するような企業、輸出等の外需を獲得する企業が多く存在する。

そして、100億企業になる過程において、賃上げにより人件費アップと同時に雇用を生み出し、設備投資やシステム投資を促進している。旺盛な成長意欲・挑戦意欲・革新意欲を持っている企業が多い。

・今後も持続的な賃上げにより人材確保・定着を実現するために、 賃上げを可能にする利益を持続的に確保する経営への転換が必要になる。

 

2.中小企業の成長が求められる理由

・「100 億企業」に成長した企業は、 海外の需要を獲得する力が大きい。

海外展開にも取り組み、国内が人口減少する中にあっても更に成長の機会を広げている。

・「100 億企業」に成長した企業は、域内需要の創出を通じて、域内経済の牽引にも貢献。

自社の豊かさのみならず、地域の豊かさをもたらしている。

・「100 億企業」へと成長していく企業は、人口減少を乗り越える成長機会を得たり、社員の待遇の改善に繋がる等、賃金水準も高くなる傾向がある。

 

3.100億企業創出に向けた政策

・成長志向の経営者を増やすため、成長のきっかけや動機付けの後押しするような環境を作っていくことや、成長志向への変革の好機となる事業承継を促進する。

・成長段階に応じて、設備投資の促進、M&A ・グループ化支援、資本性資金の活用等の施策を提供する。

・人材の確保・育成、組織体制の構築

 

企業の飛躍的成長は、商品の価格の安さのみで他社と競争して得られるものではなく、顧客のために競合他社と差別化された独自の価値を提供することで、 持続的に卓越した利益を生み出す、ビジネスの構造を作り出すことで得られるものである。」と看破しています。

まさにその通り。

そしてもう一つ、「売上高100 億円以上へと成長した企業を見ると、 自社の現状の経営資源を所与のものとせず、外部の市場環境をよく観察して成長する」とあります。

いわゆる経営戦略においては、「強み(経営資源)を活かして」ということを考えますが、それだけでは足りない、むしろ足を引っ張るという可能性を示唆しているのではないかと考えます。

強すぎる経営資源は、弱みになりうる、イノベーションを阻害する要因になりえます。

(自社の既存事業やビジネスモデルを壊すぐらいの覚悟を持って)変革・挑戦・ゼロベースの思考が重要になります。

 

最後に、「飛躍的成長を目指そうとする中小企業経営者の方へのメッセージ」から一部抜粋します。

成長の逆は、衰退。ということは、成長は、必然。成長が魅力ではなく、前提条件。その過程で、社員にとって、社会にとっての魅力を、何で実現していくかを重要と考えている。組織のメンバーが企業が目指す価値を理解し、意欲的に取り組む環境を整えることで、競合他社と異なる価値の創出、価値創出に向けたあらゆる企業活動の調整をより円滑に実行できることがある。」

 

既に少しずつ、税制優遇や補助金といった具体的な支援策が登場し、成長企業の支援が強化されています。

これに乗らなければいけない訳ではありませんが、確かに賃金を持続的にアップさせ、雇用を継続していくためには、成長するしかないと考えます。

この面白いイノベーションと変革の時代に、中小企業の皆様には積極的な取り組みと新たな戦略を取り入れ、持続的な成長を目指していただきたいと思います。

 

補助金リンク

〇中小企業成長加速化補助金

〇ものづくり補助金

〇中小企業新事業進出補助金

 

中小企業診断士 森 竜也(筆者のプロフィールはコチラ)

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