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DX経営を実現する必要条件 その2投稿日 | 2021.7.18

前回のコラム(2021.5.11)でDX(デジタル・トランスフォーメーション)経営の成功には組織の成熟度がポイントであると書かせていただきました。今回は私が受けた実際の相談をもとにその具体的な事例を紹介したいと思います。

 

1.営業担当ごとにばらばらな見積りをなんとかしたい。

従業員20名ほどの建築関係の会社からの相談でした。営業担当は数名で、どの方も経験豊富で自分の受注案件の見積から材料や業者手配、工程管理等の一気通貫のマネジメントを行っておられるとのことでした。社長の悩みはこれら営業担当各人の仕入先、価格、見積がばらばらで同じような案件でも統一性がなく、場当たり的なので、統一感を持った営業活動にするために、販売管理システムを導入して組織的営業体制を構築したいというものでした。この会社は比較的若い会社で業績好調で会社規模も徐々に拡大中であり、営業担当も有能な経験者を積極的に採用してきました。したがって、各営業担当はこれまでの業務の繋がりの下請け業者、仕入れ業者を知っており、独自の仕入手配を行っていました。会社として定まった業者の基準、仕入れ価格の基準などもない状態でした。

システム化による組織的販売体制の構築のためにはシステムを導入する前に、現状の個人事業者の集まりのような営業体制から、取引先や仕入価格の標準化などの購買体制の整備、見積における価格設定基準の標準化などの営業体制の整備をまず行っておかないとシステムを導入しても効果を得られないことをアドバイスしました。この社長さんはこれを受けて、システム投資は一旦見送り社内体制の整備を優先するという判断をされました。

 

2.生産管理システムで受注生産指示の混乱をなんとかしたい

従業員60名の創業数十年の歴史のある評判の高い会社さんです。個別受注生産型のメーカーです。共通品を仕掛り品として予め製作、在庫しておき、顧客の要求仕様に合わせて後半の工程で加工、組立するというマスカスタマイズの生産形態の会社です。製品1個のカスタマイズの製造リードタイムは1時間以内で、一受注あたりのロット数はほとんど数個以下で、月間数百以上の受注オーダーを受けています。流通途中で在庫を持つことができない商品なので、納期の数日前に仕様変更、納期変更が入ることは日常茶飯事であります。逆にこれに対応していることが同社の競争力の源泉でもあります。昔は標準的な仕様の商品構成だったものが、市場のニーズに対応するため、徐々にカスタマイズ型の商品に変わってきたのですが、工場側は旧態の管理体制であるため、毎日の業務工数は平準化されておらず、急な変更要望への対応も属人的であり、連絡漏れや仕様ミスも発生し手直しや調整の工数が増大して近年、生産性が低下してきている状況でした。

業務分析の結果、生産管理システムの効果をあげるためには受注生産品目の標準化が必須であるとの結論になりました。カスタマイズ要望と標準化とは矛盾するようですが、カスタマイズといっても一品仕上げの工芸品ではないので、十数種類の項目の組合せで表現できることがわかりました。各項目は数個程度の選択肢がありますのでその組み合わせ種類は天文学的な数になりますが、整備されればシステム処理は問題ありません。まずはこれが必須条件です。管理する商品、部品などの定義、区別という根底の情報を整理することもDX経営成功の基盤です。

 

中小企業診断士 吉田信人(筆者のプロフィールはコチラ)

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